「企業法務戦士の雑感」における書評に対する雑感
人気ブログ「企業法務戦士の雑感」において、当職の新刊「職務発明規定改正対応の実務」に対する書評を拝見しましたので、ここに雑感を述べることにします。
http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20141227
まず、冒頭で、「本書は、「職務発明」制度について、Twitterやブログで積極的な提言を行っている高橋淳弁護士が、現在行われている特許法改正の議論も踏まえつつ、これからの企業の実務において、(主に)知的財産担当部門にどのような対応が求められるのか、という視点で、書かれたと思われる一冊である」というように、本書の趣旨を的確にまとめて頂きました。もちろん、メインの想定読者は知財部門担当者なのですが、職務発明問題は人事制度の問題の一環というのが私の持論なので、できれば人事担当者にもお読み頂きたいと思っています。
次に、「自分は、書店でおそるおそる本書を手に取ったのだが、本の中では、「反対側の意見」についてもしっかり紹介されており、全体的にバランスが意識されたつくりになっている」とコメント頂きました。私の立場は企業法務戦士さんの立場とは異なりますが、最近は、(この問題に限らず)「反対説にも一理あるよね」と思うことも多く、「まともな」反対説は意識して論じるようにしています。結果として、「バランスが意識されたつくり」と評価して頂いたことは嬉しく思いました。
他方、注5において、「例えば183頁で、職務発明規程の変更に応じない「少数の反対者」への対応として、労働条件変更法理を持ち出して「配置転換をする・・・ことが可能」と書かれているくだりなどは、かなり違和感があり、ここは、会社の規模にかかわらず「個別同意の取得」を目標とする、という前提にも無理があるように思われる」という厳しいご指摘も頂きました。
「会社の規模にかかわらず」という意識はなかったのですが、読み返してみると確かにそう読めます。その上で弁解させて頂きますと、同意を取得するといっても、巻末掲載の同意書に署名しもらうだけですし、一定の要件の下、代理出席も許容しているので、「無理がある」とまでいえるのかは疑問の残るところです。もっとも、この辺りは社風の問題もあるでしょうし、研究職以外の社員にも同意書に署名を求めるのはどうかというご意見もあるでしょう。書籍にも書きましたとおり、これは、あくまで堅め目線の推奨方式ですので、「会社の実態」に合わせて簡略化することを予定しているところです。
なお、労働条件変更法理については、強い異論が出ることは承知の上の立論です。議論を喚起したいという意図もあり、あえて記載しています。
最後に、「冒頭の特許法35条条文の引用誤り*7に始まり、全体的にかなり誤植が目立つなど、出版物としてはまだ未完成(?)なところも多い」という、これまた厳しい指摘を頂いております。この点については私の不徳のいたすところであり、深く反省しております。
いずれにせよ、誤植以外の点も含め、「未完成」と思っています。本書を契機として、法改正(さすがに何の改正もしないことはないでしょう)を踏まえて、「具体的にどう対応するのか」についての議論を深めていくべきと思料します。
以上
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