冒頭、102条3項の損害概念の名称について、「相当実施料額」と呼ぶべきことが改めて提案されています。適切なネーミングと思います。これを「実施料相当額」と呼ぶこともありますが、これでは、ライセンス契約における実施料と同額のような印象を与えますから、妥当ではありません。
本題は、102条1項に基づく算定がなされた場合に、但し書きにより覆滅された部分に関し、別途、102条3項に基づく算定が可能か否かという問題であり、田村先生はこれを肯定しています。
この論点は極めて難しく、当職の見解も揺れ動いています。当初は、102条3項の損害概念は、同条1項・2項とは別物であるから、肯定説が当然と思っていましたが、否定説を採る裁判例・学説、折衷説を採る裁判例・学説に接して、折衷説が妥当と思い始めていたところでした(古城先生、尾崎先生の見解です)。しかし、この論文を読んで、肯定説に舞い戻ることにしました。理屈はともかく、損害賠償を高額化すべきという価値判断に基づけば、肯定説が妥当と考えるからです。102条をめぐる問題については、1項について三村説を採らない以上、理屈では決着がつかないと思います。他方、三村説は、総攻撃を受けている状態なので、現時点では、三村説を前提とする解釈は受け入れられないと思われます。以上のような見地から、肯定説を支持します。
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