まず、使用者が職務発明を自己実施している場合の「使用者が受けるべき利益の額」の算定方法に関する裁判例を適切にまとめておられます。本論文を参考にして多数の裁判例のルールを僕なりにまとめると以下のとおりです。
①使用者が職務発明を自己実施している場合、使用者には通常実施権が存在することに鑑み、売上高のうち、独占権がもたらした「超過売上高」をベースに利益を算定する。
②超過売上高に利益率を乗じて利益を算定する。
③利益率の数値の算定が困難な場合、実施料率の数値を以て利益率の数値と認定する。
裁判例が分かれるのは、超過売上高の認定方法です。この点については、使用者のシェアのうち、 「超過シェア」を認定し、超過シャアとシャアの割合を使用者の売上高に乗じ、さらに2分の1を乗じるこにより「超過売上高」を認定する裁判例(知財高裁平成20.2,21)と超過利益は50~60%を原則とする裁判例(知財高裁平成21.6.25)があります。
いずれの方法が正しいかは難問ですが、そもそも、裁判所が相当対価の額を計算するのは、オリンパス事件や日亜化学事件のような特別な場合に限定されるべきと思います。
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