原子力損害賠償法に基づく紛争審査会が設置されました。これは、 大量の案件について早期の紛争解決を諮るための紛争処理機関であり、不満がある場合には、裁判で決着を図ることも可能です。
紛争審査会の役割は、和解の仲介、損害賠償の範囲等について一般的な指針を定める、原子力損害の調査及び評価を行う、の3つです。まずは、一般的指針の策定が実施されるものと思われます。
和解の仲介、原子力損害の評価に関しては、被害者は、 弁護士の助力を得るべきでしょう。特に、紛争審査会の指針は一般的なものですので、個別の立証が必要になる場合には、弁護士の助力は必須です。
過去のケースとしては、もんじゅの事件がありますが、 もんじゅのケースと今回の事故を比較すると、以下の特徴があります。まず、避難期間等事態が収束するまでの期間が長期にわたることです。もんじゅの場合は、精神的損害は否定されていますが、今回は認められるべきと思います。
また、もんじゅの場合、避難地域内の不動産の価値の下 落について、売却予定がない場合には、否定されていますが、今回の場合には、長期間の居住ができない可能性もあり、そうであるならば、売却予定がない場合にも、避難地域内の不動産の価値の下落について賠償請求が許容されるべきです。
もんじゅの場合、営業損害(風評被害)は、原則として 2ヶ月分でした。その根拠は、事故調査対策本部の報告等により正 確な情報が提供され、かつ、これが一般に周知されるまでの期間に生じた減収分を営業損害(風評損害)と考えたものです。
今回は、現時点においても営業損害は継続中ですが、基 本的考え方は同様と思われます。しかし、今回は、輸入に伴う営業 損害も発生していること、農作物の作付けについて自粛の指導がなされていること等を考慮すると、指針の内容もきめ細かいものになるべきです。
もんじゅの場合、「原子力損害調査研究会報告書」が完 成する前に、請求額の2分の1の仮払いが実施されました。今回も、同様に、指針が完成する前に仮払いがなされるべきですし、それは、事態の収束をまつべきではなく(複数回の仮払いもあり得る)、また、仮払いの金額も、請求額の3分の2又は4分の3になるべきです。
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