ちまたでは村上春樹さんの「1Q84」が売れているとのこと。発売当日から気になって、書店で手にとっていたのに買いそびれて今は品切れです。
このところ、「グロテスク」それからこの「魂萌え!」と桐野夏生さんの本を続けて読みました。
図書館で借りた「グロテスク」、さすが話題になった人気の本だけあって、かなりぼろぼろになっていました。図書館のぼろぼろの本ってちょっとさわるのがこわいです。(別に私は潔癖性ではないのですが)そこらへんの包装紙でカバーをつくってから読みました。
「グロテスク」は東電OL殺人事件と言われる実際の事件をモチーフに書かれた小説ですが、読み物としておもしろいフィクションになっています。
この語り手によって描写される登場人物全員が、奇妙な絵画のようにゆがんでグロテスクでした。まるで怖い夢の中の人物のように。
語り手の眼を通した物がすべてほんとか嘘かわからないということに途中で気づいてきます。信用できない語り手が語る物語なのです。
ほかの登場人物(犯人とされた人や、被害者)の日記や独白も挿入されていますが、誰もがゆがんだ眼を通して語るので、いったいどれがほんとなのか、どれが嘘なのかが判然としないまま終わるという奇妙な小説でした。
そもそも人間というのは、みんな自分自身の目を通し、世の中を自分なりの見かたである程度ゆがんて見ていて、他を攻撃したり非難したりするもので、それをこの本では大きくデフォルメされて見ているような気がしました。
読んでいる間は、嘘と悪意の中にどっぷりとつかったようでした。
ふと、本から現実の世界にもどって、リビングでくつろいでいる犬たちを見るとほっとしましたよ。
それだけ入り込むほど面白かったと言えるのかな?
そもそも「グロテスク」に興味を持ったきっかけは、「人格障害の時代」(岡田尊司著 平凡社新書)という本に、演技性人格障害の見事な描写、と紹介されていたからです。
人格障害の時代は、この系統の本に興味のある人は一読の価値がある本だと思います。
「グロテスク」が面白かったので、続いて図書館で「魂萌え!」を借りました。
59歳の普通の主婦が夫の急死によって直面するさまざまな現実が描かれています。なんだか身につまされる、というのか、自分に置き換えれば、おそろしくなりましたが、結局、なにが魂萌えなのか私にはわかりませんでした。ここに出てくる老いらくの恋(?)はさっぱり共感できず・・・。「グロテスク」とはまた違う意味で、『いやな奴』ばっかり出てくる、登場人物の誰ひとりとして好感が持てなくて不快と思ったのは、私の見かたが「ゆがんでる」?
これは桐野さんの本にしてはミステリーじゃないんだなあと思いながら読み進んでいましたが、最後の最後に、これもある意味ミステリーなのかもしれない、と思いました。
主人公の行動の不可思議に感じたところが、最後に、腑に落ちたような気がしたからです。全く共感はできませんが・・・。
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パールのおなかはきょうはだいぶ回復してきました。
ニケも元気です