今日の西日本新聞記事から。
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9条精神どこへ 閣議決定案判明
(西日本新聞)- 2014年06月18日 02時00分
17日の安全保障法制整備に関する第7回与党協議会で、政府側が示した閣議決定の原案は、戦後69年にわたって海外で武力行使をしなかった日本の安保政策を大きく転換させ、憲法9条の精神を骨抜きにしかねない内容だ。何を、どう変えようとしているのか。
■集団的自衛権
原案は、他国が武力攻撃された場合も、時の政権が「国民の生命、自由が根底から覆される恐れがある」と判断すれば、日本が武力行使することを認めた。
例えば、朝鮮半島有事で韓国を援護する米艦が北朝鮮から武力攻撃を受けた場合、自衛隊は米国の要請に基づき武力を行使して米艦を防護することが可能になる。しかし、北朝鮮から見れば日本の「参戦」を意味し、自衛艦が攻撃対象となることは間違いない。
北朝鮮に向かう国籍不明船が武器弾薬を運んでいる可能性があると判断すれば、自衛隊は強制的な船舶検査(臨検)が可能になる。ただ、相手の船舶から反撃され、戦闘行為に発展する危険も高まる。
中東で紛争が発生し、日本への原油などの海上交通路(シーレーン)であるペルシャ湾に機雷が敷設された場合、政府が資源確保を重視し「国の存立が脅かされる事態」と判断すれば、自衛隊による機雷掃海が行える。
だが、停戦合意前の戦闘状態での機雷除去は武力行使であり、相手国から攻撃される恐れがある。この場合の仮想敵国は日本と伝統的に友好関係にあるイランで、両国関係は壊滅的となる。ペルシャ湾まで自衛艦が出動すれば、「地球の裏側」まで範囲は広がることにつながりかねない。
■グレーゾーン
沖縄県・尖閣諸島など離島に武装漁民が上陸したり、日本の民間船舶が襲われる現場に自衛隊がたまたま遭遇したりするような武力攻撃に至らない事態を想定。警察や海上保安庁では対応が遅れ、被害が拡大する可能性がある場合、政府が自衛隊に対し、海上警備行動や治安出動の命令を迅速に出せるよう運用を見直す。警察や海上保安庁の装備や、自衛隊との連携も強化する。
平時に北朝鮮などが弾道ミサイルの発射準備に入ったケースでは、自衛隊と連携して警戒行動している米艦を、自衛隊が防護できるように法整備する。
ただ、いずれのケースも自衛隊が前面に出る場面が増え、他国を刺激して軍事的緊張が高まる懸念がある。相手国が軍隊を出す口実ともなり、不測の事態が起きる可能性は高まる。
■国際協力活動
憲法9条は海外での武力行使を禁じている。政府は日本が武力行使しなくても、他国の武力行使に密接に関与すれば「一体化」と見なし、違憲との立場をとってきた。
内閣法制局は1997年の国会答弁で(1)他国軍と自衛隊の地理的関係(2)自衛隊活動の具体的内容(3)他国活動との密接性(4)他国の活動の現況-を総合的に勘案してケースごとに判断するとの基準を示した。一体化を避けるため、イラク戦争などで「非戦闘地域」「後方地域」を設定。自衛隊は後方支援に徹してきた。
しかし、原案では「現に戦闘行為を行っている現場」ではない場所でなら、自衛隊による補給や輸送などの支援活動が可能となる。支援活動中に他国の軍隊が戦闘を始めれば、自衛隊は直ちに活動を休止・中断するが、その場合でも人命救助を目的とした捜索救助活動は例外として続行する。
ただ、戦況は瞬時に変化する。支援活動中に戦闘が始まり、自衛隊員が巻き込まれる危険は高まる。2001年のアフガニスタン戦争に後方支援の名目で参加したNATO軍(北大西洋条約機構)は、これまでに千人以上の死者を出している。
◆武力行使、遠い歯止め
集団的自衛権の行使容認に向けた自民、公明両党の協議は、武力行使に関する閣議決定の文言調整が最後の焦点となる。17日に政府が示した原案のうち、「根底から覆される恐れ」の「恐れ」と、「他国に対する武力攻撃」の「他国」の表現を、公明党の要求に沿ってより限定するよう修正する見通しだ。しかし、この2点はもともと政府、自民党が公明党対策として用意していた「譲歩点」にすぎず、具体的な歯止めにはほど遠い。
原案は、自民党の高村正彦副総裁が提案した「自衛権発動の新3要件」をベースに、他国に対する武力攻撃であっても「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される恐れがある場合」は集団的自衛権行使を容認する内容だ。
公明党は、「恐れ」では時の政権の判断で拡大解釈する余地が大きいため「切迫した事態」などと限定するよう要求。「他国」についても、米国を念頭に「密接な関係のある国」といった表現にするよう求め、自民党も基本的には受け入れる方向だ。公明党幹部は「文言を修正すれば現行の自衛権発動要件と実態はほとんど変わらない。支持者にも説明できる」と強調する。
だが、あらかじめ高めのボールを投げ、譲歩を装って相手に花を持たせる手法は自民党のお家芸。永田町では「のりしろ」と呼ばれ、実態は言葉遊びにすぎない。米国に向かうミサイルの迎撃や、海上交通路(シーレーン)の機雷除去など、集団的自衛権について政府が提示した8事例の制限にはなり得ない。
実際、高村氏は17日の自民党の会合で「公明党から要請があれば、8事例ができなくならないような範囲内で柔軟に対応したい」と明言。政府、自民党も「(8事例の)全てが対応可能になる」との認識だ。
行使の範囲を限定するには、8事例のうち、新3要件で行使できるものとできないものを選別することが最も分かりやすい。公明党もこれまで「事例を通して議論をしっかりやらないといけない」(北側一雄副代表)と主張。8事例は「個別的自衛権や警察権で対応可能か、想定が現実的ではない」と反論してきた。
しかし、北側氏や山口那津男代表は17日になって「事例に固執するのはいかがなものか」と突如、姿勢を一変させた。「歯止め」の担保を放棄したともいえる対応だ。
=2014/06/18付 西日本新聞朝刊=
集団的自衛権明記、行使を容認 閣議決定案の全文判明、政府提示
(西日本新聞)- 2014年06月18日 02時01分
集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈変更を柱とした閣議決定原案の全文を17日、西日本新聞が入手した。他国に対する武力攻撃であっても「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される恐れがあり得る」と認定。これを排除する武力行使は「自衛のための必要最小限度の範囲内の実力行使として許容される」と解釈改憲を打ち出した上で、こうした武力行使は「国際法上は、集団的自衛権が根拠となる」と明記した。
政府は同日、安全保障法制に関する第7回与党協議会でこの原案を提示したが、その場で回収し公表しなかった。安倍晋三首相は今国会中の閣議決定を目指しているが、公明党の党内議論が進んでおらず、実質的な最終日となる20日の決定は困難な情勢だ。
原案は(1)武力攻撃に至らない侵害(グレーゾーン事態)への対処(2)国際社会の平和と安定への一層の貢献(国連平和維持活動などの国際協力)(3)憲法第9条の下で許容される自衛の措置(集団的自衛権の行使)-の3分野で構成。
(3)については、これまで日本に武力攻撃があった場合にのみ認めていた自衛権行使の要件を「他国に対する武力攻撃であったとしても、その目的・規模・態様などによってはわが国の存立を脅かすことも現実に起こり得る」として変更。現行憲法下でも集団的自衛権の行使は可能と判断した。
実際の行使に当たっては、「民主的統制の確保が求められる」として、原則として事前に国会の承認を求めることを法案に明記する方針を示した。
(1)については「切れ目のない態勢を確保することが一層重要」と指摘し、離島に武装集団が上陸するなど海上保安庁や警察では対応が困難なケースを想定。閣議決定を必要とする自衛隊の海上警備行動や治安出動の発令手続きを緩和し、迅速な対応を目指す。
(2)についても、自衛隊による後方支援拡大に向け、憲法で禁じられている「他国との武力行使の一体化」の制限を緩和。「現に戦闘行為を行っている現場」以外での支援活動を可能とするよう法整備の方針を盛り込んだ。 (東京政治取材班)
◆国民 白紙委任してない
【解説】安倍晋三首相が憲法解釈を変更する閣議決定にいよいよ踏み切ろうとしている。17日明らかになった閣議決定の原案は、他国が武力攻撃を受けた場合でも、これを排除するための日本の武力行使は「憲法9条が許容している」として、集団的自衛権の行使容認を明記した。
首相が安全保障法制の基本的方向性を表明した5月の記者会見から1カ月余り。この間、どれほどの国民が解釈改憲の意味を理解し、自らの問題として考え、答えを出しただろうか。
推進派は中国や北朝鮮の脅威に対処するため解釈改憲は必要だと説き、反対派は「戦争への道を開く」と批判する。どちらも間違いではないが、的確でもない。いくら言葉で「限定容認」と言っても、激変する国際情勢で軍事的関与を解禁すれば、将来的に自衛隊員や場合によっては国民が血を流す事態は避けがたい。
そのリアリティーを十分理解した上で踏み切るべきか否かを国民が選択する。先の大戦への深刻な反省の下に日本が守り続けた憲法9条を変質させるという極めて重大な判断には、それこそが不可欠なはずだ。
閣議決定には国民の判断は一切反映されない。首相に、ここまで重大な決断を白紙委任した覚えはない。
=2014/06/18付 西日本新聞朝刊=
「戦争のない世界を」 母親大会で解釈改憲反対を決議 [福岡県]
(西日本新聞)- 2014年06月16日 00時34分
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