夏の肴
侘助 夏の酒の肴(魚)は何が一番かな。
呑助 そりゃ、何といっても鮎の塩焼きでしようね。鮎を河原で塩焼きして食べる美味しさはないですよ。川風の中で鮎の塩焼きと酒は夏の楽しみです。
侘助 そうですよね。スーパーで売っている鮎の塩焼きはどうして川音を聞いて食べる鮎のように美味しくないのかね。
呑助 本当にそうですね。野外で食べる鮎は美味しいですね。
侘助 酒蔵で飲む搾りたての酒が美味しいのと同じかな。
呑助 雰囲気も美味しさのうちでしようかね
侘助 そうかもしれないね。酒蔵で飲んだ美味しい酒を買って帰り自宅で飲むと酒蔵で飲んだ美味しさがないという経験をしたことがあるな。
呑助 いつだったか。京都のホテルにあった料理家で食べた鱧(はも)と酒は絶品でしたよ。
侘助 えっ、ノミちゃん、京都で鱧(はも)を食べた。
呑助 そうですよ。私はチョットした通ですからね。夏の肴は鱧ですよ。
侘助 鱧と酒はお座敷ですよね。山と川、河原の煙と川風の鮎とは風情が違うね。
呑助 漆塗りの座卓と京焼の器と鱧料理、冷えた生酒でしようかね。
侘助 云うね。確かに。旨そうだ。ノミちゃん、若いのに老成しているね。
呑助 そうですか。酒塾で研修を積んでいますからね。美味しく酒を飲むことにかけては贅沢したいと思うようになっているんですよ。
侘助 夏の酒は鮎と鱧かな。
呑助 そんなことないですよ。新島に泳ぎに行ったことがあるんですよ。新島の民宿で食べた「くさやの干物」が癖になりましたよ。
侘助 「くさや」を食べた。私も松戸にあった飲み屋で良く「くさや」を肴に酒を飲んだよ。
呑助 「くさや」は一年中あるみたいだけど、夏に初めて食べたから、夏の干物という印象があるのかな。
侘助 「くさや」はトビウオの干物だよね。だから夏の魚なんじゃないかな。
呑助 そうですよ。その時、トビウオの刺身も肴にして酒を飲んだんですよ。
侘助 トビウオは夏の魚だものね。確かに、さっぱりした白身の切り身がシコシコして美味しいね。
呑助 夏の魚というと私にとっちゃ、第一は鮎でしょうか、次がトビウオかな。鱧はなかなか食べられないような気がしますね。
侘助 そうだね。柏の高島屋か、春日部の西武に行けば、鱧は手に入るかもしれないけれど、料理屋で食べる味じゃないような気がするな。
呑助 私は別にして若者の魚離れが進んでいるというけれども私は、日本酒と日本食の食文化を大事にしていきたいと思っているんです。伝統的な美味しい魚の食べ方を学んでいきたいと思っているんです。もちろん美味しいお酒を楽しみたいからですけれどもね。
侘助 頼もしいね。魚食は日本の食文化の中心と云ってもいいからね。
呑助 肴は魚ですよ。何と言っても日本酒には魚ですよ。
侘助 そうだよね。この頃、私は煮魚が美味しく感じるようになってきたよ。でも勿論、「くさや」、食べたいね。