アメリカの中国観
侘輔 中国の政治情勢を世界中で一番研究しているところと言えば、どこだと思う。
呑助 ロシアとか、東南アジアの国々じゃないのかな。
侘助 どうして?
呑助 ロシアは中国と国境紛争をしていたし、東南アジアの国々は南シナ海の島々の領有権をめぐって対立があるんじゃないのかな。だからね。
侘助 確かに紛争はあったけれども、ロシアとの国境紛争は解決しているらしいよ。それから南シナ海の島々をめぐっては、フィリピンのドゥテルテ大統領が中国と交渉し、二国間で話し合いによる解決の道を探るという点で合意しているみたいだよ。だから、中国の台頭が脅威だと感じている国というと、それはアメリカのようなんだ。
呑助 あっ、そうか。アメリカですね。米ソ冷戦にアメリカは勝利し、世界に君臨する超大国として振る舞っているわけですからね。中国の台頭をアメリカは快く思っていないわけですよね。
侘助 きっと、そうだと思うよ。だからアメリカの国防総省は毎年、議会に「中国の脅威」中国の軍事力に関する「年次報告書」を提出しているようだ。この報告書は世界のどの国の研究書より、精度が高く、どのような批判にも耐えうる分析だと孫崎享さんは著書『21世紀の戦争と平和』の中で述べている。
呑助 高校生が読んでもよく分かる本だと聞きましたよ。
侘助 そう、本当にそうだよ。小説家の井上ひさしの座右の銘は「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめにかく」であったという。まさに井上ひさしさんが目指したような本だよ。
呑助 アメリカ国防省は中国のことを何といっているんですか。
侘助 中国共産党を体制として存続させ、永久化すること。ここに中国指導者の根幹がある。戦略の選択はこの根幹に導かれているとね。
呑助 中国共産党独裁体制を存続させることだいうことですか。
侘助 そのようだ。そのためには経済的成果を出し、国民生活を向上させること。国民生活を豊かに安定させることが中国共産党の支配体制を安定させると考えている。このようにアメリカ国防省は中国の政治情勢を分析している。
呑助 それはどこの国にあっても同じゃないですかね。生活が貧しくなり、いつ生活が行き詰まるのかを心配するような政府を支持する国民はいないんじゃないですかね。
侘助 例えば、朝鮮民主主義人民共和国のような国にあっては、いつまで待っても貧しく、辛い日常生活であっても政府を支持する国民がいる国もあるからねー。
呑助 まったく閉鎖的な国でなければ実現しないんじゃないかと思いますよ。
侘助 そうなのかもしれない。だから冷戦時代のアメリカの対日政策は自民党一党独裁体制を維持することだった。そのためには日本国民の生活向上、生活の安定を図ることによって、自民党支持態勢をつくったんじゃないのかなと思うんだけどね。
呑助 そこに結論がいくわけですか。