朝鮮半島が分断されたことに日本は責任がないのか。
侘助 一橋大学の先生をしているコォン・ヨンソクさんは述べていた。韓国のリベラル派の人々、韓国民のほぼ半分の人々は日本に責任があると考えていると。第二次大戦後ドイツは東西に分断されたのになぜ日本は分断されずに朝鮮が南北に分断されてしまったの。このような気持ちを持っている韓国の人々がいるとね。
呑助 このような気持ちを持つ韓国の人々に対して日本人の中には朝鮮半島が分断されたことに対する責任を感じる日本人は少ないように思いますね。
侘助 それが実体だろうね。確かに朝鮮半島の北緯38度線を南北の境界線と確定したのはアメリカ陸軍大佐ディーン・ラスクだと言われているからね。彼は朝鮮半島の地図を眺め、この辺りでいいだろうと地図の上に線を引き、そこを南北朝鮮の国境線にした。
呑助 1960年、ケネディがアメリカ大統領に就任すると国務長官に任命された人ですよね。
侘助 徹底した反共主義者かな。1962年のキューバ危機の最中、ラスクはソ連外相アンドレイ・グロムイコを晩餐の席に呼び、キューバに配備されているソ連のミサイルについてグロムイコを問いただした。このとき、ラスクはしこたま酒を飲んで酔っており、グロムイコが「あんな状態の彼を見たことがない」と表現したほどであったという。ラスクはグロムイコに「あなた方はミサイルに取り囲まれることに慣れているが、私達は慣れていない。どうして平静を保てようか。」と吐露したという逸話の持ち主らしい。
呑助 ラスクは酒豪だったんですね。
侘助 冷戦というのは将に第三次世界大戦だった。恐怖の均衡が平和を保った。平和の裏側には絶えず恐ろしい戦争があった。
呑助 米ソ冷戦の最前線が朝鮮半島北緯38度線だったということなんですか。
侘助 ヤルタ会談が1945年2月、ソ連クリミア自治ソビエト社会主義共和国のヤルタ近郊のリヴァディア宮殿で行われた。アメリカ合衆国のルーズベルト・イギリスのチャーチル・ソビエト連邦のスターリンによる首脳会談が第二次世界大戦後の国際体制を決めた。日本について1945年2月8日、アメリカのルーズベルトとソ連のスターリンは秘密会談を行い、その後イギリスのチャーチルとの間で秘密協定を交わした。1944年12月14日、スターリンはアメリカの駐ソ大使W・アヴェレル・ハリマンに対して、満州国の権益(南満州鉄道や港湾)、樺太(サハリン)南部や千島列島の領有を要求した。アメリカ大統領ルーズベルトは太平洋戦争を戦った日本の降伏にソ連の協力を求めた。ソ連のスターリンはルーズベルトの要請に応え、1945年2月8日、日ソ中立条約をソ連は一方的に破棄、日本に対して宣戦布告をすると同時にソ連軍が日本の植民地、満州国へ、朝鮮半島へとどっと侵入してきた。
呑助 アメリカ政府もイギリス政府もソ連が日本の植民地、満州国と朝鮮を併合することを容認していたということですか。
侘助 スターリンの野望というか、ソ連の膨張政策をアメリカ政府もイギリス政府もいいじゃないか、ソ連兵が日本兵に殺されるのならと、見て見ないふりをした。
呑助 すると思いのほか、日本軍は戦うどころか、敗走に、敗走を重ね、日本列島へと逃げ帰って行ったということですか。
侘助 満州国と朝鮮半島には強力な日本軍が存在しているとアメリカ政府のルーズベルトもイギリス政府のチャーチルも考えていた。ソ連のスターリンもそのように考えていた。だから死んでもかまわないようなソ連兵、囚人兵を投入し、満州、朝鮮半島へと進軍させた。満州や朝鮮半島にいた一般日本人たちの悲惨な逃避行が始まった。またソ連軍の捕虜になった日本軍人たちのシベリア抑留という悲劇が始まった。『岸壁の母』の辛い思いが生れた。ソ連軍は破竹の勢いで朝鮮半島を南下してくると朝鮮半島すべてをソ連が併合するとに不安を覚えた米軍がソ連の南下を阻止すべく、軍を派遣した。その結果、北緯38度線で米ソの軍事境界線が引かれた。
呑助 朝鮮半島は日本の植民地であったがゆえに米ソは朝鮮半島の日本軍を殲滅すべく侵入してきたわけなのでしょうね。
侘助 日本の植民地であった中国国内の満州も朝鮮半島の北部もソ連軍の占領下に入った。これが第二次世界大戦の結果だった。その後、中国では、国共内戦の結果勝利した人民解放軍が満州をソ連軍と話合い解放し、中華人民共和国を1949年10月建国した。朝鮮半島北緯38度線以北の地に1948年9月9日、朝鮮民主主義人民共和国の建国を宣言。
呑助 朝鮮半島が第二次世界大戦後南北に分断されてしまったのは大日本帝国政府が朝鮮半島を植民地支配していたからソ連軍が日本帝国軍を打倒するべく満州、朝鮮半島に、樺太、千島の島々へ進軍した。それはスターリンの領土的野望だった。アメリカ政府はソ連の領土的野望を挫くべく、米軍もまた朝鮮半島に進軍した結果、朝鮮半島は分断されたということですね。
侘助 そうだ。大日本帝国が朝鮮半島を植民地支配することがなければ、朝鮮が米ソに分断されることがなかった。コォン・ヨンソクさんがおっしゃる通り、日本は朝鮮半島を分断してしまった責任があると私は考えている。