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醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  2010号   聖海(白井一道)

2016-02-16 13:07:46 | 随筆・小説
  
  言論の自由は貧困の武器なのだ--ギリシア喜劇名言集より--

侘助 『ギリシア喜劇名言集』を読んでいたら目が釘付けになった言葉に出会ったよ。
呑助 その言葉は何です。
侘助 「知っているかね、言論の自由は貧困の武器なのだ。もしもそれを失えば、人生の楯を投げ捨てることになるのだ」。
呑助 「言論の自由は貧困の武器」ですか。
侘助 含蓄に富む言葉だと思わないかい。
呑助 どうして言論の自由が貧困の武器なんですかね。ピンときませんがね。
侘助 そうかな。ギリシア喜劇といえば、古代ギリシア都市国家ポリス、アテネの民主社会が想い浮かぶよね。この民主社会において、言論の自由が貧困の武器になっているということだと思うんだ。
呑助 なるほどね。でも民主社会と貧困は関係があるんですかね。
侘助 おおありだと言っている言葉が「言論の自由は貧困の武器」だということなんじゃないのかな。
呑助 あっ、そうですか。
侘助 まだ、納得できていないようだね。
呑助 そうですね。
侘助 民主社会というのは自由・平等を建前とする社会だろう。民主社会に富者と貧者がいるということは民主社会とは言えないじゃないか。
呑助 富の分配が不平等だということですか。
侘助 そうだよ。富の分配が不平等だから貧者が出てくる。貧しい者がポリス市民に向って富の分配が公平ではないと主張することによって富の分配の平等を実現することができるということなんじゃないかと思ったんだけどね。
呑助 古代ギリシアの人々はどんな生活をしていたんですかね。
侘助 富をどのように手に入れていたのかということかな。
呑助 そうですね。
侘助 アテネ人は自給自足の生活を誇っていたが、穀物の自給が出来なかったようだ。そのため奴隷を使ってオリーブの木やブドウを栽培し、オリーブ油やワインを造り、エジプトに輸出した。このような貿易によって富を得ていた。
呑助 そのような社会なんだったら、豊かな人と貧しい人とが出てきてもやむを得ないんじゃないですかね。
侘助 確かに樹木栽培に向いている土地を利用している者と樹木栽培に不利な土地にいる者では富に差が出てくるのが当然だよね。だからたくさん富を得た者は収穫の少なかった者に援助をした。それを当然のこととして行ったんだ。
呑助 へぇー、富者の方々は立派だったんですね。
侘助 アテネ市民としての連帯感のようなものが市民同士にあったんじゃないのかな。
呑助 なるほどね。市民としての連帯感ですか。
侘助 私はアテネ市民だという意識が富者と貧者とを生まなかったんじゃないかと思うんだ。
呑助 小さなコミュニティーだったんですかね。
侘助 そうだね。小さなコミュニティーだからみんな仲が良かった。ここにアテネ市民としての連帯感がつくられたのかもしれないな。
呑助 金持ちは金を出すのが当然だと言うのが言論の自由ですね。
侘助 そうなんだよ。金持ちは金を出すのが当然でしょ。ケチるのは人間として劣っている。こう言える社会が民主社会なんじゃないかな。
呑助 いいですね。真面目に働いているのに貧しかったら、金持ちに金を出せと言いたいですね。
侘助 そうでしょ。金持ちは社会的責任を果たせ。これが連帯感というものですよ。『二一世紀の資本』を書いたピケッティが言っている。金持ちは金を出せとね。富の分配の平等化を図ることが二一世紀の課題だとね。
呑助 累進課税を促進するということですか。
侘助 そうだよ。高額所得者には高額の税金を支払ってもらって、社会保障が充実すれば、貧しい人は正々堂々と生活保護が申請できる。そのような社会が民主社会かな。

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