ひとり林に
だれも 見ていないのに
咲いている 花と花
だれも きいていないのに
啼いている 鳥と鳥
通りおくれた雲が 梢の
空たかく ながされて行く
青い青いあそこには 風が
さやさや 過ぎるのだろう
草の葉には 草の葉のかげ
うごかないそれの ふかみには
てんとうむしが ねむっている
歌うような沈黙(しじま)にひとり
私の胸は 溢れる泉! 高く
脈打つひびきが 時を進める
『立原道造全集4』
だれも 見ていないのに
咲いている 花と花
だれも きいていないのに
啼いている 鳥と鳥
通りおくれた雲が 梢の
空たかく ながされて行く
青い青いあそこには 風が
さやさや 過ぎるのだろう
草の葉には 草の葉のかげ
うごかないそれの ふかみには
てんとうむしが ねむっている
歌うような沈黙(しじま)にひとり
私の胸は 溢れる泉! 高く
脈打つひびきが 時を進める
『立原道造全集4』