夏のあと
それは今でも心がいたむのだ
寝ぐるしい夜のあと
空はカラリと晴れて
ああ 夏が終わった
その朝は ふだんよりずっと明るく
ずっと美しいように火山の膚はかがやいていた
私は村の火の見櫓の下に
約束しないで人を待っていた
それが私たちのお別れだったから
それがほんとの最后の朝だったから
(それは今でも心がいたむのだ)
私の旅立ちを知らなかったおまえが
美しい朝 何を考えていたことか
空にはうすく煙がながれていたのだが
『立原道造全集4』
それは今でも心がいたむのだ
寝ぐるしい夜のあと
空はカラリと晴れて
ああ 夏が終わった
その朝は ふだんよりずっと明るく
ずっと美しいように火山の膚はかがやいていた
私は村の火の見櫓の下に
約束しないで人を待っていた
それが私たちのお別れだったから
それがほんとの最后の朝だったから
(それは今でも心がいたむのだ)
私の旅立ちを知らなかったおまえが
美しい朝 何を考えていたことか
空にはうすく煙がながれていたのだが
『立原道造全集4』