ウォーホール左派

今日も作詩、明日もまた、本格詩人のブログ。

ヨハネのアポクリュフォン

2016-11-18 20:43:30 | Weblog
ナグ・ハマディー文書

霊の泉が光の活ける水から流れ出て、すべての
アイオーン(流出)とあらゆる形の世界の支度をした。
彼は自分を取り巻く純粋な光の水の中に自分自身の
像を見たとき、それを認識した。すると彼の「思考」が
活発になって現れた。それは光の輝きの中から彼の前へ
歩みだした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「戦後詩によるメーソン殲滅作戦」(那珂太郎)

2016-11-18 11:10:05 | Weblog
黒い水母(那珂太郎)全文

どろどろどろどろどろどろどろどろ
葬列の太鼓の響きよりものうく
老い朽ちた陸橋を渡ってゆく
跫音(あしおと)のかげ
黄昏のレントゲン線に透けてみえる
黒い水母のむれ
びれびれと触手そよがす海藻の間をぬって
どこまでそれは流れて行くか
海底にくらく蹲(うずくま)る
煉瓦の巨体の雁首から
無意味な煙はたえずきな臭く立ちのぼる
それは屍を焼く火葬場ではない
無期徒刑囚の
牢獄でもない
しかしそこから吐き出されるのは
口の縫いふさがったやつ
眼玉を刳りぬかれたやつ
手足の関節を外されてぶらんぶらんさせてるやつ
垂れこめた雨に朦朧とけぶる
それから歪曲された 畸形の生物
やぶれた皮膚に紫の血をにじませ
黄い蛔虫(かいちゅう)を尻からたらして
へんに透明な 揺れうごくうどんこの
臓腑
に詰まった古い記憶ーー
不滅の真理
自由

それは腐って屍体にひとしい悪臭をはなつ

醜怪な文明のメカニズムの中から吐き出された
メタンガスの暖気のような 気泡のような
黒い水母たち
彼等は向かうべき方向をしらない
行きつくべき目当てをもたない
かなしい
盲の
実存よ

砕かれた時間の夜光虫きらめく
焦げ残りの肋骨
ひん曲った鉄柱の錆びた傷口
をひざらして注ぐ雨


西北の空を稲妻が引き裂けば
映し出されたアスファルトの背筋のうねりに
白濁の膿汁と
赤黒い血液と
互いに交ざらぬニすじの流れ
その無気味な電流のエスカレーターにのって
意志もなく彼等はどこへ漂うーー
虚妄の明日の希みを灯す
贋造ダイヤの光ゆらく街区の方へ?

ああ 陰湿なこの国の梅雨季のなかを
萎えた手足は右にゆれ 左にゆれ
眼もない
口もない
喪神のパラシュートのむれはただただ沈降して行く

*「戦後詩によるメーソン殲滅作戦」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする