時間経過と共に「何か…潮が変だ…」と、思うようになった。
潮の、何が変に感じているのか。
「動いていない」「下潮が速すぎて、仕掛けが落ち着かない」「二枚潮になっている」等々の日常に良く感じる事とは、少し違う気がする。
気が付いたのは、午後便で出た時だった。
“赤潮”が、発生していた。
ベイト反応は、良い感じで出ている。
「アタリが来ても、良いはずなのだが…」
なかなか、ヒットに結び付かない。
漸くのアタリは、日高さんに来た。
良い感じの、竿の曲がり。
「おっ、来ましたね」と、嬉しくなった。
上がってきたのは、良型の真鰺。
ジグにヒットしてきているのを見ると、魚の活性は有る気がするが…。
後が続かない。
簑原さんも、頑張っているのだが、アタリに繋がらない。
1時間、2時間と、時間が過ぎていく。
「潮がおかしいな…」
このアタリから、潮の変化に疑問を感じ始めた。
「気分転換に、ロックフィッシュをやりますか」
干潮の潮止まりから、満潮の潮が動くタイミングで、魚の食いに変化が出る事を期待する。
しかし、ロックフィッシュには“凄い大物”が潜んでいた。
水深10メートル前後の、浅場を攻める。
簑原さんが、アタリを捕らえた。
良型のアカハタに「お土産確保」と、ホッとする。
良型のアカハタも、ヒットしてきた。
日高さんには、大アタリが来ている。
水深が浅いだけに、走られたくない。
太いリーダーで、相手の走りに耐える。
「何だ、これは」
竿を握る手に、力が入る。
「あっ…」
針が外れた。
「くっそー!何だ今のは!」
竿が凄い力で、海面に突き刺さらんばかりの、曲がりを見せた。
簑原さんの、頑張っている。
アカハタを、順調に釣り上げている。
良型が、連発してきた。
日高さんも、仕掛けをより太くして、大物に挑む。
「絶対に取ってやる!」
強い決意で、仕掛けを入れる。
アタリが来た。
相手の凄い力で、竿が立てられない。
「頑張って!」
傍らで、固唾をのんで見守るしかない。
竿が思い切り伸される。
「竿が折れる」
水深が10メートル位なので、直ぐに岩場に走られる。
耐えるしかない場所だ。
「ウウッ、オオーッ」
日高さんの口から、唸り声が聞こえる。
相手は走り、日高さんは耐える。
「浮かせられるかも知れない」
そう思った…が…。
バチッと、リーダーが切られる音がした。
「ウオッ、何じゃ今のは。化け物が居る」
強烈な格闘の後に、大きな驚きが表情に表れていた。
「次は、取っちゃるど」
ジギングは、潮の異変に大苦戦。
しかし、ロックフィッシュは、大格闘と好釣果を得る事が出来たが…。
複雑な心境で、船着き場に帰る。
午後便の、佐藤さんと私の従兄弟の信司と、交代する。
信司と日高さんは、親しい仲。
笑顔で挨拶して、交代する。
「ロックでやられた」と、日高さんが信司に伝える。
「頑張ります」と、信司が答えている。
午後からは、北東の風を覚悟で、南に下る。
「今日は、ロックオンリーで行きますね」
何カ所かの、浅場を回る事にした。
ロックフィッシュ得意の佐藤さんが、信司の指南役。
最初のポイントは、岩場が波を被っている。
海底は、ゴツゴツした岩場。
「瀬掛かりは、お友達よ」の覚悟で竿を振る。
最初のアタリは、佐藤さんに来た。
続けてアタリが来る。
瀬掛かりに苦しんでいた信司も、アタリを捕らえる。
35センチの良型だ。
「釣りました」と、笑顔が良い。
荒い岩場から、アラカブもヒットしてきた。
少しずつ、ポイントを移動していく。
以前から「彼処で、やってみたい」と、思っていたところを巡っていく。
佐藤さんも「雰囲気を感じるところでは、ヒットしてきますね」と、釣果を重ねている。
信司も、佐藤さんにアドバイスを貰いながら、釣果を上げている。
二人共に、順調に数を重ねていく。
「移動しましょう」
夕方になって、風が落ちてきた。
海上も凪になって、走りやすい。
沖合に出てきた。
「此処は、浅いところで5メートルだよ」
「瀬は、もの凄く荒いよ。瀬掛かり必至だよ」
ここでも、最初のヒットは佐藤さん。
鬼カサゴも、ヒットしてきた。
海底の荒さに苦戦しながらも、信司が釣果を上げている。
「今日は、ロックフィッシュに専念して、頑張りました」と、笑顔が輝いている。
釣りの途中に、海面に赤い物が筋になって浮遊しているのが確認。
「これ、赤潮ですよね」
沖合には、赤潮の太い筋が出来ていた。
「うわっ、これは大変だ。潮がおかしくなっている」
そんな不安を抱えて、午後便の釣りを終えた。