もう、何度も行き来をした道である。階段を登ると玄関がある。そこには、ルリマツリ(プルンバゴ)の青い花が咲いていた。
道路に面した敷地内にも、いつも花を絶やさない素敵なお宅であった。
もちろん、何度かその花をカメラに収めさせていただいたこともある。迂闊にも、こんな大きなレモンの木があることには気づかなかった。
人間なんて、何でも見ているようで、何も見ていないんだななんて思った瞬間だった。
木成りのレモンに感激し(実は、身近に見たのは初めてなのであった)、長居をしてしまったが、ブラ散歩は始まったばかり、先を急がなくっちゃ。
バス通りの十字路を横断し、貸し農園の方へと舵を切る。
うわっ、どうしちゃったんだ! このレモンイエロノーのママチャリは? バスケットには、季節をはるかに超越したフェイクフラワーが目一杯盛られている。
「East 39th Street」だって? マルエツは、いつニューヨークに進出したのだろうか。いや、そもそも、ここはニューヨークなのか、狭山なのか、錯綜するジオグラフィーに頭がめっちゃ混乱している 笑
気を取り直し、歩み続けることで精神の安寧を取り戻そう。
落葉に備えて伐採されてしまった(?)トウカエデ、お役所の方もいろいろご都合がお有りのようだから刈ってしまったことは不問に付そう。それでも、植物は生き続けている。負けちゃいられないとばかりに新葉を芽生えさせ、小さな秋が現出していた。
その小さな秋を起点として、空に描き出されたY字路が一つ。右へと辿ると冬に続くのかな? では、左へと辿ると、どこに通じているんだろう?
道を左へと折れ、貸し農園を目指す。
農園の向こうには未耕作地が広がっており、浮島の如き紅葉が見て取れた。
紅と黄色とのアンサンブル! 朗らかな歌声が聴こえてきたような気がしたよ。
この辺りも、何度となく通ったブラ散歩道だ。この紅と黄とに染めた浮島の左手には細い踏み分け道が通っており、まっすぐに北上すると丈高いイイギリが道を塞いでいる。
どんなに静かに近づいても、4~5メートルほど手前までくると、鳥たちが一斉に飛び立つ羽音が耳に届く。
さほど好物ではないと聞くが、そして、それを象徴するかのように冬遅くまで紅い実がそのままに残っているのだが、それでも、気が向いたときにはついばんでいるようだ。
イイギリの左手にはカンボケ(寒木瓜)が植えられている。何畦も、何畦も、整然と植えられているのだ。木瓜畑なのか? 何年も見ているが、出荷された形跡はない。
早いものはもう真っ赤な花をほころばせている。ぽつり、ぽつりとだがね。