奏~かなでうた~詩

自作詩を書いています。自分の心と向き合いながら。

*七行詩~恋文五編* 【再録】

2012-09-19 | 詩詠~うたうたい


* 恋文之一 「さよなら」 *


あの日 渡せなかった恋文を

今 こうして読み返しています

知らなかったでしょう

手を繋ぐことさえなかった私が

いつも隣で見ていたことなど

目蓋に残る眩しい記憶ごと

捨て去る決心が ようやくつきました



    



* 恋文之二 「少女のままで」 *


いつかまた会えるでしょうか

目映いあなたの あの笑顔に

出会った頃の初々しさで

もう一度 あの日に帰りたい

ずっと信じて祈っています

月日の流れに色褪せない

ときめく心は 永遠の少女



    



* 恋文之三 「未練」 *


たった一言

抱きしめて欲しいと

ひと思いに叫べたなら

遠くへ行ったあなたの

すべてがいとおしくて

自分には過ぎた恋だったと

にがい涙を そっと飲み込む



    



* 恋文之四 「永遠の片思い」 *


どうしようもないくらい

恋い焦がれたあなたは

二度と会えない人になりました

今も覚えてくれていますか

またいつか 会える日は来ますか

「好き」という言葉は 封印します

形のない あなたへの思いだけ抱いて



    



* 恋文之五 「初恋」 *


私に向けた いたずらな微笑み

スポーツ万能な そばかすの男の子

檸檬のような清々しさと

乱暴だけど 優しい瞳

礼拝堂で並んで祈った修学旅行は

何ものにも代え難い 大切な思い出

今もふと蘇る 汚れなき初恋の日々



    





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以前、こちらに載せた【7行詩】恋文シリーズを、トーナメント用に連作の形式に再録しました。
本来、連作の形で作った作品なので、これで一作となります。



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安穏と恐怖の狭間で

2012-09-19 | 心詩~こころうた・己
目的行動とも
現実逃避ともつかぬ没頭に
身を委ねている

将来への投資と思えど
先を考えることから
無意識に目を逸らし
今という一点だけを見つめ
快楽に酔いしれたいと願う


いつまで続くか
いつまで許されるのか
私の時間は
私の未来は


影のようにつきまとう
死への恐怖は拭い去れず
正の感情にさえ
後ろめたさを抱きながら
もう二度と
心から笑うことはないのだろうと
がんじがらめのこの身を嘆く

分からぬのが人生
見えぬのが人生なれど
いつの日にか確実に訪れる
恐怖の予言が
目覚めれば消える
夢であったならいいと


虚と実と
安穏と恐怖の狭間で
削られてゆく正気
もたらされる狂気

長い道のりなど考慮に入れぬ
今この瞬間を
むさぼるように生きるのみ

いずれ死ぬるが
命あるものの運命(さだめ)ならば
どのような訪れも
受け入れるしかない


海原に浮かぶ
笹舟のごとき
小さきものよ
我が命は
人の一生は

頬を伝うは……

2012-09-19 | 詩詠~うたうたい
悲しみの涙は
もう流れない

なにもかもを奪われた
あの日
信じるものすべてが
色をなくした

この世界の正体に
ようやく気づいた愚かさに
理性は静かに崩壊してゆく


苦しみの涙は
もう流れない

痛みに敏感だった
あの頃
心を消される絶望を
知りもしなかった

闇に飲み込まれ
無へと引きずり込まれ
魂ごと喰い尽くされる


喜びの涙は
もう流れない

片手にも余る
幸せの断片は
水泡(みなわ)のように
儚く掻き消えた

優しい記憶は
手に残る温もりは
すべて 白紙に戻る……


この頬を伝うは
壊れ果てた
心の破片(かけら)
乾いた血の塊と
人でありたいと叫ぶ
命の咆哮

この頬を伝うは
人であった私の
虚無の涙