うさぎとかえるの里

鳥獣戯画をこよなく愛する自分の日本文化や日常に関する想いをつづります。

長谷川等伯

2010-02-24 02:26:58 | 鑑賞
なんで上野に行ったのかって?
それは、今日から始まった「没後400年特別展 長谷川等伯」を見るためです!

会期が一か月という短期開催なので、初日の今日行っておかないといけない感じだったので(^^;)

等伯といえば、智積院の障壁画くらいしかパッと思い浮かばないのですが…

すごいですね、能登時代は、絵仏師として活動していたそうで、その時の仏画の
細かいことと言ったら…。

人物も風景も動物も水墨もなんでもすごいですね。
そして、こうして一同に会してみると、画風の変化も分かるから、面白い。
展覧会ならではですね、個体でそれぞれのお寺とかで見ても、こうはいかない。
繊細なものから、ダイナミックなものになり、後半は別の意味で繊細(水墨画)になっていく…っていうのが私の感想でした。

今回特に印象が強かったのか2作品あるので、思ったところを書いてみます~。
でもこの2作品、やっぱり目玉作品なので、だれもが注目してると思うんですけどね。

というわけで、ミュージアムショップで、「長谷川等伯」の本を買いました。
…というのも、じっくり見たかった「仏涅槃図」が、今回の図録にちびっとしか出ていなくて…絵葉書とかにもなっていないし…(i_i)



「仏涅槃図」
1568年に描かれて石川にあるものと、1599年の京都本法寺にある巨大なものと、ふたつありますが、私は後期の大きさには圧倒されるものの、作品としては1568年のものの方が好きです。

涅槃図は、素材として珍しくはないかもしれない…けど、私にとってはちょっと思い入れが
あるものでして、それは、奈良の法隆寺五重塔初層の塑像群のなかの「涅槃図」があまりに
インパクトがあったからなのです。
あの、嘆き悲しむ人の表情が、ほんとうに切なくて、塑像ならではのリアリティーも
あって、好き…っていったらおかしいけど、気になる作品なのです。

…この、等伯のもすごいです。
入滅した釈迦の周りに集まった、弟子も菩薩も鬼畜も動物の、悲しんでいる様子!!
布で目元を押さえたり、袖で顔を覆ったり、倒れこんだり、菩薩は手を合わせているのもいます。
そして、1568年のものでは、バクと鵺みたいな幻獣も、身をよじって悲しんでいる。
他の動物たちも、悲しんでいるのが伝わってくるのがすごい。
動物を描いて、悲しんでいるのを表現させるのって、すごい技術だと思うんですよね…

あと、法隆寺の塑像でも、向かって右奥に阿修羅がいますが、今回も探しちゃいました。
1568年のものはちょっと分かりづらいですが、1599年のほうは、しっかり手も多臂だし、顔も三面あるし、分かりやすいです。

ワタシ、昔から「悲しみの表現」にこだわる性質がありまして、絵でも像でも
小説でも映画でも芝居でも、どれだけ「悲しみの表現(演出)」がリアルで心に迫ってきて、美しいか…がその作品を「素晴らしい」と判断する基準になってしまうのです。

…つまり、切なくなるような気持ちにさせてくれるものが、「心に訴える作品」…というか、勝手にコレを自分の「日本人の美意識」と思っております(^^;)

子供のころから歴史小説とか戦争ものを多く読んできたので、感化されてしまったのかもしれません。

その次は、この作品!

「松林図」

水墨画の技法を極め、霧にかすむ松の林を、墨の濃淡で、奥行き深く描いたものです。

近いものは、濃く、奥のものは、霧でかすんでいるので薄く…しかも木の重なり具合によって、その濃淡もまた微妙で…

…広い画面をダイナミックに使った(屏風だからね~)ため、その余白にまた味があるというか…

心ワシヅカミでした。

…と、コレにもやっぱり理由がありまして、
都会にいると農務はほぼ経験することはないのですが、山沿いで育ったために
霧(山ではガスといいますね…なんで?)は、しょっちゅう経験していて、
その状況が、リアルに頭に再現できて、懐かしかったから…なんですね。

霧の日ってなんか静寂で、松とか針葉樹は濃く、細い木は、薄く、手前の木は濃く、奥の木は薄く…って当たり前なんですが、まさに水墨画の世界でした。

たとえば…。

松林ではないけど、こんなイメージ。
コレは2007年の軽井沢で撮った写真(写真部のとき)(^ω^;)
…どんな駄作でも、消去しないワタシならではの蔵出しです~。







この、霧の世界は、まさに水墨画。

こういうのが私の潜在意識にあるので、等伯の「松林図」にひかれたのでしょうかね。

…涅槃図では、見ているワタシまでせつない顔になり、
松林図では、なんか心にグっとくるものがあり、またまた心に栄養をもらった展覧会でした。

ちなみに、客の入りはこみすぎず、でもそこそこ入っていて(初日なのに)
自分のペースで見ることはできたので、よかったです。
昨年春に、阿修羅像を見に来たときは、外で随分並びましたが、もちろん並ばずに
入れます~。
コメント
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