こもりがき : 来年もよく実るようにとのまじないで、木の先端に一つ二つ取り残しておく柿の実 by GOO辞書
田舎に行くと、ガキの頃を思い出す。僕は、法に反することをいろいろしていた。スピーカーの裏側にある磁石は強力で、当時の50円玉をいきおいよく引き寄せた。磁石に糸をつけて賽銭箱におろすとカチッカチッと50円がくっついた。自転車のダイナモの磁石はさらに強力だ。糸もかけやすい。
善悪の判断はついていた。それが泥棒であり人の道に反することぐらいはわかっていた。
相当の低能か不良でない限り子供でもそれくらいはわかる。
ただ、当時の50円とは今の500円以上だ。実際、今の500円玉より大きい。ケチな親を持ったので、当時のぼくは善悪よりも緊急な必要にせまられていた。
子供の世界ではのけ者にされることがいかに恐ろしいことか。ゼニがなくてはコマも駄菓子も買えない。籤も引けない。
そんな子供だった僕ですらしなかったことがある。
「こもり柿を盗って食う。」それだけはしなかった。
善悪を超えた何か。仲間外れ以上の恐怖。・・・ よくわからないが盗って食ったりしたらとにかく恐ろしい方向に人生が展開していく気がして、こもり柿は盗らなかった。
草野町にツーリング。
おそらく60年ぶりに見たこもり柿。今の子供もとらないようだ。今の子は食おうとも思わないのか。そうだな、きっと。
だあれもいない。音のない世界。日本の田舎、草野。
冬とはそもそも色が少ない。人々はそんな中、昔から何とか工夫して冬でも色がある木々を探してきた。日本の田舎にはそんな工夫がまだ残っている。
ほら、
とか、
日本家屋にしか合わない。
観光地ではないので、落ちた椿もそのままだ。だあれも歩かない。
地面から栄養を吸って光合成をして、それぞれにいろんな色を見せる。
建物も素敵だ。
旧草野銀行に行った。その草野銀行の天井。
代々の家、代々の庭、・・・
木々が毎年同じ色の花をつけるように、人々はずっと同じ土地に同じ家に同じ庭を眺めて生きてきた。
なんの不足があるというのか。この暮らしを捨てて獲得したものには、いかほどの価値があるというのか。
(長くなりましたので旧草野銀行、旧草野病院・・・は次回)