下北沢・本多劇場で「大人計画」の「母を逃がす」というお芝居を観にいった。
お昼前に出かけ、昼食を下北沢「打心蕎庵」という蕎麦屋でとった。
「打心蕎庵」は、駅から少し歩いたところにあるためか、今時のおにーちゃんやおねーちゃんはいません。
景色もよく、大変美味しかったです。
そして、いよいよ「大人計画」の「母を逃がす」。
[評]母を逃がす(大人計画)
笑い織り込み悲哀描く
写真・田中亜紀
この劇団を主宰する松尾スズキが11年前に発表した戯曲の再演。その間、日本を取り巻く状況も、大人計画自体も変化している。昨今の日本の閉塞感を予見したような本作を、魅力を増した俳優陣が演じたことで、激しく心が動かされた。
東北の農業共同体クマギリでは、雄介(阿部サダヲ=写真右)の家族を中心に自給自足の楽園を夢みているが、現実の暮らしは厳しい。ある夜、謎の男が侵入したことをきっかけに人間関係が揺らぎ始める。
悲惨な閉鎖社会から逃れたくても行き場のない男女の悲喜劇だ。懸命に生きがいを見いだそうとする彼らのもがく姿が、ギャグを交えてとっぴに描かれ、笑わずにはいられない。雄介は権力を誇示するため、自身の膨大な生命保険料を住民に負担させるなどむちゃに振る舞う。養豚場主任(宮崎吐夢)と養鶏場主任(顔田顔彦)は捨て子の両親になろうと決意するが、どちらが女親になるかを巡って戦うという具合だ。
主な配役は初演時と変わらないが、俳優たちは変化した。役の年齢に近付いた者もいるし、様々な客演、映画やテレビの仕事を経験して、元々強烈だった個性と表現力をさらに磨き上げた。人間関係をかき回す流れ者役の宮藤官九郎の好演もあり、それぞれの役の個性がはっきりして思いのこもったセリフが飛び交っていた。笑い転げながらも彼らが背負う悲哀が伝わる。
終盤で雄介の母(池津祥子=左)は、脱出に失敗した住民に「何度でも行くんだよ」と言葉をかける。どんなに状況が厳しくても希望を持てば生きていける。祈りが込められた一言が心に響いた。(祐成秀樹)
――19日まで、下北沢・本多劇場。
(2010年12月1日 読売新聞)
[自分の評] ちょーつまんない。おわり。