【コラム-絶対音感と相対音感(1)】
絶対音感と相対音感について、何回かに渡って、考えてみます。なお、このブログの本題、即効アドリブ術は、多数派である、絶対音感を持っていない人を対象として書いています。
絶対音感というのは、聞いた音が何の音なのかが、参考にする音(例えば音叉のAの音)が無くてもわかる能力として知られています。これは音が聞こえれば、その音の名前を言うことができるという受け身の能力のように思われます。しかし、プレーヤーの立場から見れば、これから吹こうと思って頭の中にイメージしている音が何の音なのか解るという、とても便利な能力です。
楽器を吹く場合、2つのケースが考えられます。一つは、楽譜を見ながら吹く場合。もう一つは、自分が吹こうと思っているメロディを吹く場合。後者の場合、これから吹こうとしている音が、心の耳には聞こえているわけですから、絶対音感との関係は分かり易いでしょう。
楽譜を見ながら吹くという作業は、絶対音感の能力とは逆の能力を必要としているように見えます。例えば、楽譜を見て、心の耳でその楽譜の音を聞いてみるとしましょう。すると、音が聞こえれば、それが何の音なのかは解るので、楽譜と一致しているかどうかが解ります。違っていれば即座に修正できます。つまり、フィードバックシステムができあがっているということです。そしてこのフィードバックシステムは使い込むほどに性能が上がり、ほとんど待ち時間ゼロで楽譜をみて正しい音を再生する(心の耳で聞く)ことができるというわけです。
相対音感は、一つの音を聞いても、その音の名前を言うことはできないが、何か(何でもいい)知っている音があれば、それとの相対関係から、別の音の名前を言うことができるという能力です。絶対音感との違いは、音の名前を判断するために、基準になる音が必要で、2つを比較しないと音の名前が解らないということです。
曲を階名で歌えなくても歌は歌えるし、口笛も吹けます。美しいハーモニーを感じることもできます。絶対音感や相対音感というのは、そういう音楽的な感覚のことではなく、音と言葉(音の名前)とを結びつける能力(あるいは技術)のことなんですね。(その二に続く)
【コラム-絶対音感と相対音感(2)】
前回、「絶対音感」、「相対音感」とは、音と名称を結びつける能力あるいは技術だと書きました。そして、音の名前を知るということが、プレーヤーにとってはとても便利なことだと書きました。
しかし、いろいろなプレーヤーがいるもので、楽器を吹く時に音の名前は必要ないという人もいます。そういう人たちに聞いてみると、音そのものと、楽器の状態(例えばトロンボーンだったら、スライドの位置とか、唇の状態、息のスピードなど)とが直接対応しているようです。こう書くと、とても難しいことをやっているようですが、歌を歌う時や、口笛を吹く時にそういうアプローチを取っている人は多いと思います。
話が逸れましたが、大多数のプレーヤーは、楽器を吹く時、まず音の名前を知り、次にその音の名前に対応する楽器(およびプレーヤー)の状態を作り出す、という作業をやっていると思います。このタイプのプレーヤーにとっては、音と名称を結びつけるという能力はとても重要です。
絶対音感は一般的には年齢が低いうちに獲得する必要があると言われています。一旦獲得してしまえば、これは強力なツールです。例えば周りの景色を見た時、あれは赤、あれは緑、これは黒・・・という風に色の名前がわかりますね。そして、普通は、間違うことはありません。絶対音感の場合も、全ての音と名称が完全に対応しているので、精度100%と言えます。
相対音感は、いつでも獲得可能です。というより、いつでも能力を高める努力をすることができ、し続ける必要があります。相対音感の場合、基準音に対する相対的な関係を推定するという作業が加わるため、どうしてもミスを伴います。慣れないうちは、精度はかなり低いものとなってしまいます。また、音と音との離れ具合によって得手・不得手が生じます。
世の中には、絶対音感と相対音感の2種類しかないのか、その中間的な状態は無いのか、という疑問が一瞬頭の中をよぎったかもしれません。答えはNOです。絶対音感でないものは全て相対音感と考えていいと思います。例えば、トロンボーンのことを考えると、スライドの位置や、フレージングなどから、ある音特有の音いうものがあります。その音色に基づいて、いくつかの音だけは、基準音が無くても何の音かがわかります。一旦ひとつの音がわかれば、相対関係に基づいて、他の音も何の音かが解ります。しかし、これは相対音感における基準音を、音色から推定しているということであり、基本的には相対音感です。
この講座でのアドリブのアプローチは、相対音感に大きく依存しています。このため、相対音感の精度を高めることが、大きな課題となります。とはいえ、それができないと先へ進めないというものではありません。音をミスったところで大惨事になるわけではありません。気楽に、効率的にアドリブができるようになることが目的です。(その三に続く)
絶対音感と相対音感について、何回かに渡って、考えてみます。なお、このブログの本題、即効アドリブ術は、多数派である、絶対音感を持っていない人を対象として書いています。
絶対音感というのは、聞いた音が何の音なのかが、参考にする音(例えば音叉のAの音)が無くてもわかる能力として知られています。これは音が聞こえれば、その音の名前を言うことができるという受け身の能力のように思われます。しかし、プレーヤーの立場から見れば、これから吹こうと思って頭の中にイメージしている音が何の音なのか解るという、とても便利な能力です。
楽器を吹く場合、2つのケースが考えられます。一つは、楽譜を見ながら吹く場合。もう一つは、自分が吹こうと思っているメロディを吹く場合。後者の場合、これから吹こうとしている音が、心の耳には聞こえているわけですから、絶対音感との関係は分かり易いでしょう。
楽譜を見ながら吹くという作業は、絶対音感の能力とは逆の能力を必要としているように見えます。例えば、楽譜を見て、心の耳でその楽譜の音を聞いてみるとしましょう。すると、音が聞こえれば、それが何の音なのかは解るので、楽譜と一致しているかどうかが解ります。違っていれば即座に修正できます。つまり、フィードバックシステムができあがっているということです。そしてこのフィードバックシステムは使い込むほどに性能が上がり、ほとんど待ち時間ゼロで楽譜をみて正しい音を再生する(心の耳で聞く)ことができるというわけです。
相対音感は、一つの音を聞いても、その音の名前を言うことはできないが、何か(何でもいい)知っている音があれば、それとの相対関係から、別の音の名前を言うことができるという能力です。絶対音感との違いは、音の名前を判断するために、基準になる音が必要で、2つを比較しないと音の名前が解らないということです。
曲を階名で歌えなくても歌は歌えるし、口笛も吹けます。美しいハーモニーを感じることもできます。絶対音感や相対音感というのは、そういう音楽的な感覚のことではなく、音と言葉(音の名前)とを結びつける能力(あるいは技術)のことなんですね。(その二に続く)
【コラム-絶対音感と相対音感(2)】
前回、「絶対音感」、「相対音感」とは、音と名称を結びつける能力あるいは技術だと書きました。そして、音の名前を知るということが、プレーヤーにとってはとても便利なことだと書きました。
しかし、いろいろなプレーヤーがいるもので、楽器を吹く時に音の名前は必要ないという人もいます。そういう人たちに聞いてみると、音そのものと、楽器の状態(例えばトロンボーンだったら、スライドの位置とか、唇の状態、息のスピードなど)とが直接対応しているようです。こう書くと、とても難しいことをやっているようですが、歌を歌う時や、口笛を吹く時にそういうアプローチを取っている人は多いと思います。
話が逸れましたが、大多数のプレーヤーは、楽器を吹く時、まず音の名前を知り、次にその音の名前に対応する楽器(およびプレーヤー)の状態を作り出す、という作業をやっていると思います。このタイプのプレーヤーにとっては、音と名称を結びつけるという能力はとても重要です。
絶対音感は一般的には年齢が低いうちに獲得する必要があると言われています。一旦獲得してしまえば、これは強力なツールです。例えば周りの景色を見た時、あれは赤、あれは緑、これは黒・・・という風に色の名前がわかりますね。そして、普通は、間違うことはありません。絶対音感の場合も、全ての音と名称が完全に対応しているので、精度100%と言えます。
相対音感は、いつでも獲得可能です。というより、いつでも能力を高める努力をすることができ、し続ける必要があります。相対音感の場合、基準音に対する相対的な関係を推定するという作業が加わるため、どうしてもミスを伴います。慣れないうちは、精度はかなり低いものとなってしまいます。また、音と音との離れ具合によって得手・不得手が生じます。
世の中には、絶対音感と相対音感の2種類しかないのか、その中間的な状態は無いのか、という疑問が一瞬頭の中をよぎったかもしれません。答えはNOです。絶対音感でないものは全て相対音感と考えていいと思います。例えば、トロンボーンのことを考えると、スライドの位置や、フレージングなどから、ある音特有の音いうものがあります。その音色に基づいて、いくつかの音だけは、基準音が無くても何の音かがわかります。一旦ひとつの音がわかれば、相対関係に基づいて、他の音も何の音かが解ります。しかし、これは相対音感における基準音を、音色から推定しているということであり、基本的には相対音感です。
この講座でのアドリブのアプローチは、相対音感に大きく依存しています。このため、相対音感の精度を高めることが、大きな課題となります。とはいえ、それができないと先へ進めないというものではありません。音をミスったところで大惨事になるわけではありません。気楽に、効率的にアドリブができるようになることが目的です。(その三に続く)