渋谷パルコ劇場に三谷幸喜の「90s」という二人芝居を観に行った。
以下、「六号通り診療所所長のブログ」から抜粋。
「この作品は昭和60年のある宗教の信者による、お子さんの輸血拒否事件を下敷きにしています。
「説得」という題でノンフィクションになり、テレビドラマ化もされた事件です。
交通事故で聖マリアンナ医大病院に搬送された10歳の少年が、両親に信仰上の理由から輸血を拒否され、搬送後5時間で出血多量のため亡くなったのです。
警察も司法も玉虫色の結論を出し、両親の責任も医療機関の責任も、全く問われることはありませんでした。
戯曲においては、
特定の宗教は、
日本の地方に伝わる、
土着の風習と変えられています。
西村雅彦演じる大学病院の整形外科の副部長は、
9歳の少年が救急で運び込まれたことを知り、
気軽にその子供の父親に、
輸血の承諾書を取ろうとしますが、
近藤芳正演じる父親は、
輸血拒否の風習のある地域に住み、
それを頑なに拒否します。
題名の「90ミニッツ」というのは、
巻頭近くで副部長が、
「90分以内には輸血をしないと患者は確実に死にます」
と言うところがあり、
つまりはそれからノンストップで2人だけの、
90分の「説得」という闘争が始まる、
という仕掛けです。
下敷きになった事件では5時間という時間を、
90分に短縮した、
ということろが1つのミソです。
「副部長は最初は理詰めで説得しようとするのですが、
ノラリクラリとそれをかわされ、
途中からは副部長の側が、
自分がそれほど患者のことを考えて、
交渉に当たっているのではないことを告白して、
むしろ両者の立場は反転します。
ラストはギリギリのタイミングで、
副部長が同意書なしで輸血することを決断し、
子供は手術をして助かることが示唆されます。
そして、最後に、
父親はもう3秒副部長の決断が遅れていたら、
自分が承諾書にサインをしていたと告げ、
その3秒に自分は一生苦しむだろう、
と語りその場を後にします。」
…
笑は無いです。
挑戦的な作品であることは確かなようです。