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アイヌ語では、そのものズバリ
「retar(白い) cir(鳥)」と表現されたオオハクチョウ。
表記するのはムズカシイですが、
あえて書くなら、レタッチリというところでしょうか。
昔のアイヌの人たちは、
オオハクチョウとかコハクチョウという区別をつけていたわけではないので、
大雑把にハクチョウのことを指す=白い鳥というわけです。
「ウマくねえ、あんなもん」
という声は現代でも複数回聞くのですが、
「えっ? 食べたことあるん!?」とたたみかけると、
「食べなくたってわかるべや!」
と返される始末。
実際に食べたことがあるという方にはいまだ、
残念ながらめぐり合っておりませんが、
昔のアイヌの人たちにとっては食料のひとつであったという記述が
残ってはいます。
屈斜路コタンで生まれ育ったフチ(アイヌ語で「おばあさん」の意味)は
幼かったころの記録として次のように書いています。
ある日、フチに、「嵐の前にどうして白鳥は騒ぐの」と聞いてみたら、
白鳥は空高く飛んでいるので、天の神や、風の神や、山の神から、
「天気が悪くなるから沢山の食べ物や、沢山の焚き木や水を用意する様に。
それから吹雪になるから氷を渡って学校へ行ったり来たりしない様に。
子供達は遠くに遊びに行っちゃ駄目だよと、人間に教えてあげなさい」と
白鳥に言い付けがあるの。
だから、天気が悪くなる時は白鳥が騒いで、教えてくれるのさ、とフチが言ったので、
「フチは白鳥の言葉がわかるの」と私が聞きました。
すると「わかるよー、お前たちも大人になったらわかる様になるよー」と…
【弟子シギ子著「わたしのコタン」より】
私も、わかるようになりた~い!