今日のうた

思いつくままに書いています

ロング、ロングバケーション & 春との旅

2021-05-23 17:16:42 | ④映画、テレビ、ラジオ、動画
コロナで死が一歩近づいたように感じるこの頃、
借りる映画も老いを扱ったものが多くなった。
だからと言って死を真正面から扱った映画は、今は観たくない。

①ロング、ロングバケーション(原題はThe Leisure Seeker)
leisureの原義は、好きなように行動する自由が認められている。
バケーションよりもleisureの方が映画に合っている。
ハリウッド映画の名優、ヘレン・ミレンとドナルド・サザーランドが
夫婦役で出ているのでアメリカ映画と思ったら、イタリア映画だった。
全身に散らばったガンを患う妻と、アルツハイマーで記憶が飛ぶ夫。
子どもたちはそれぞれに入院と施設を進めるが、そんなものくそ食らえ
とばかりにキャンピングカーで自由に生きることを選ぶ。

自由はもちろん責任が伴う。
夫はおもらしをするし、すぐに居なくなる。
妻のことも忘れるし、昔の恋人の名前で呼んだりする。
車はパンクするし、レスキューを待っていれば強盗にだって遭う。
その度に、妻は独り言のように怒りや罵りの言葉を発する。
こうすることで、気持ちを整えているのだろう。

冒険の楽しみもいっぱいだ。知らない人と自分たち家族の
昔の幻灯(8ミリ?)を観たり、夫の教え子と出会ったり、
たまにはホテルに泊まって二人でワインやダンスを楽しんだりする。
今は手を煩わす夫だが、永い年月、夫を尊敬し愛してきたのだろう。
ヘレン・ミレンの、何が起きても笑い飛ばす強さ、軽やかさ、
賢さ、逞しさ、そして愛情深さに惚れ惚れした。
笑いながら観ているうちにしっかり心に刻まれる、まさに職人芸を
見る思いだ。ジャニス・ジョプリンの曲(Me & Bobby McGee)がいい。
自由でいたけりゃ責任が伴う。このことをしっかり心に刻み付けた。

②春との旅
こちらは日本のどこにでもいる、仕事は出来ても一人では生きられない
男の物語だ。
原作・脚本・監督小林政広。仲代達矢演じるおじいさんは漁師をして
いたが、今は足が少し不自由で、二十歳の孫の世話になっている。
妻は病死、娘は自死、孫は学校が廃校になり給食の職を失う。
孫の自立を妨げるおじいさん。見ていてイライラする。
自分の面倒を看てくれる兄弟を探して、孫とおじいさんの
旅が始まる。孫役の徳永えりがいい。

メーキングビデオの中で、監督は次のように語っている。
「スタッフをはじめ、役者にやさしくしてはダメだ。
 やさしくすると役者がダメになる」
突き放し、遠くから見守る。徳永は暗闇の中、朝まで一人で海を
見ているように命じられる。
誰も助けてはくれない。頼れるのは自分だけ。
こうした環境の中で、彼女は成長していったようだ。
いい監督に出会うことは、役者冥利に尽きるだろう。

コメント
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