11月7日(日)午後3時、あいつの位牌が置かれたマンションの
郵便受けから広告チラシを取り出し捨てる。
1週間で受け箱から溢れ出している。
殆ど読まれることなく廃棄される広告印刷物。
莫大な資源の浪費。やはりネット販売が無駄なく
安く出来る。
廃棄を終えて港を一望出来る親水公園で
ぼんやり船留りを見つめる。
船留りの先は地名が日の出町という。
港に太陽が沈み、オレンジ色に輝く。
11月7日(日)午後3時、あいつの位牌が置かれたマンションの
郵便受けから広告チラシを取り出し捨てる。
1週間で受け箱から溢れ出している。
殆ど読まれることなく廃棄される広告印刷物。
莫大な資源の浪費。やはりネット販売が無駄なく
安く出来る。
廃棄を終えて港を一望出来る親水公園で
ぼんやり船留りを見つめる。
船留りの先は地名が日の出町という。
港に太陽が沈み、オレンジ色に輝く。
そうか!あれから1年が過ぎたのか
まだ、迫り来る死への予感は感じていなかった。
短パン姿の私は術後で、体調は良いとは言えなかったが
秋の陽射し浴びて 海老川沿いを急ぎ足で運動公園に向かった。
4月、桜吹雪だった
海老川土手の桜並木は緑から茶色に変わりはじめ黄色になった葉が
必死になって秋風に耐えて落ちるのを拒んでいた。
紫紺の空から中空の太陽が桜並木の梢を抜けた光は
私の頬に温かみ射し、ジョギングの人々の軽やかな足取りに
光浴びせて一直線に続いていた。
川面の鳥、亀、鯉は人影恐れることなく陽だまりを悠然としていた。
道行く人に聞いた。
「運動公園は何処ですか」
http://cis-natcon.com/park/park04_funaun.html
「海老川沿いの畑と田んぼの地平終わりに
建物があるだろう」。と指指した。
その上に二つの鉄塔がある。
その間だと教えてくれた。
薄緑の丘陵の先、建物の上に二本の鉄塔が尖がり部分が見えた。
その鉄塔の間だと言う。
術後で尻には傷の痛みがあったが急いだ。
川沿いには
寺、葬儀場、介護特養ホーム、リハビリセンター、精神病院、焼き場、霊園が点在
丘陵の下には終末医療センターがある。
医療センターで見離された病人はこの川を辿れば
その人の心身の状態により、黄泉国入国審査官から
行き先を指示される。
この川は別名黄泉川と名付けたい。
90分以上急ぎ足で汗ばみながらも立ち止まると秋風は
シャツを冷たくさせ震えさせる。
丘を登りきると運動公園があった。
茨城の佐貫から歩いてきたとは思えない
元気と笑顔で貴君は運動公園前に立っていた。
全体が丸みを帯びた体型は現役新聞社時代に
付けられたニックネーム 「金ちゃん」(金太郎)そのものだ。
リュックを背負い白の上下の服装はスニーカーでは無く
下駄を履けば 放浪画家山下清にそっくりだ。
運動公園から 東武野田線塚田駅近くにある
船橋温泉湯楽の里で待つ、あいつのところへ急いだ。
到着するが居ない、フロントに尋ねる
「食道癌で声を失った中年男が来るのでと状況を説明した」
しかし、時間経過したが現れない。
2階のフロントから外を見るとあいつが従業員のおばさんに
何か言われている。
入場を断られて外に出されたのだ。
声出せず、首に包帯巻いた目が鋭い男が
入浴もしないので胡散臭く思ったらしい。
このオバサンの見下す目つきに激しい怒りを感じた。
後で、責任者が謝罪したが、この時
私は何かしら彼の行く末を感じ取り
日常の面倒を見なければならないと悟った。
今は
日毎に、あいつは現世にはいないのだと実感する。
死後の世界は無く、遺骨もやがて水となってしまう。
私の思い出の中だけで生き続け
やがて私も現世去れば、あいつは家族を持たなかったので
殆ど記憶も記録も消滅する。
そんな感情が深まりゆく秋、刻一刻迫る冬に
切ないため息が漏れる。