馬鹿も一心!

表題を変えました。
人生要領良く生きられず、騙されても騙されも
懸命に働いています。

遺漏。

2012-06-01 17:54:47 | 日記

5月31日(木)17時事務所を出て馬喰横山駅から乗車

九段下で半蔵門線に乗り換え17時40分に病院着。

五階病室に入る。

マスクをして頬肉のなくなった顔に大きく見える目を天井向けていた。

お袋の目だけがこちらを向いた。

「おしっこ、おしっこ」とマスク越しに舌が回らないのだ。

喋り続ける。

私はコウモリの手のような骨と黒ずんだ血管が浮きでた手をそっと握った。

お袋の目は強かった。私をじっと見続けた。

「死んだほうが楽だね」と息子だから言った。

お袋は首を少し曲げ「嫌だ」との動き

耐えきれず窓のカーテンを開け、首都高速上のノロノロ車列とビル群を見つめた。

 

人生の大半を過ごした家に生きては帰れないだ。

お袋に怒られ逃げ回った幼い日々が思い出され目を拭った。

息子が入ってきた。

孫が熱冷ましシートを額と脇腹に貼ってあげた。

お袋は「ありがとう」としっかり答えた。

暫くして弟がやってきた。

今日は副院長である妹は他病院での会議でいなかった。

 

19時半 病院を出て中華料理屋で息子と食事した。

 

今日は妻も実母の介護でいないのだ。

先々週、血圧の薬を頂く診療所の老医師が言った。

「遺漏で生き続けることが本当に良いのだろうか」?

私には結論は出せない。

お袋の唯一の楽しみは私達が見舞いに訪れること。


見切り千両。

2012-06-01 10:43:54 | 日記

5月30日(水)昼前、ずっと気がかりになっていた大先輩の携帯電話にかけた。

呼び出し音が鳴り直ぐにソフトな声音のあの方の声が出た。

名前を名乗ると「おう、おう」返した。

二年前,この方から突然、自宅に電話があった。音信不通になって10年以上の歳月過ぎた。

大先輩は確かめていないが80歳近い年齢。

若い頃、大手旅行会社に勤めたが退職して、それから中小旅行会社を転々として50歳半ばで旅行会社を設立した。

大手旅行会社が団体ツアーでハワイ、台湾に送り込んでいたが、大先輩は金持ち層を

ターゲットにした。

海外の一般的名跡観光地ツアーも周って、次は誰もが行っていない海外観光を

したい金持ちご夫婦を顧客にした。

例えば南アメリカでミイラを見る旅、中近東の砂漠をラクダで

旅する等を企画した。

これを扱える旅行代理店は日本に殆どなく申し込みが殺到した。

しかし湾岸戦争が勃発して半年間ツアーの仕事がなくなった。

さすがに困って占い師に転業?しようと思い看板チラシまで製作。

当時その看板を見た。

波乱に飛んだ生き方だった。

この方と親しい友人が私のサラリーマン時代の上司だった。

私が入社した頃は既に退社していた。

2年前にその上司が亡くなったことを知らせてくれたのだ。

73歳まで社長業をして会社を外国人に譲渡した。

大儲けをして引退したのだ。

今は富士の麓に別荘を持ち上石神井の自宅には外車3台を所有。

週に2回は別荘暮らし、他はロータリークラブの会合で食事会。

当人曰く「普通の人より少し上の暮らし」と言っている。

苦境に置かれても常に明るくユーモアがあり

周囲を明るく元気付けていた。

英語の達人でもある。

大先輩の好きな言葉に

見切り千両」がある。

 

引退する時も一番儲かった時に会社を原価で譲渡した。

私も大先輩の考え方に共感した。

今までも見切り千両で危機を脱したことが再三あった。

そのため金銭でも高額の損失を出したが

致命傷にはならなかった。

見切り千両は金のことと思いがちだが

わたしの実感は人間関係の清算にあると思う。

金の周りに必ず欲深き人間が付きまとうが

金の固執より「こいつはだらしない人間と判断したら、損しても断ち切る」

その覚悟が必要だ。

金銭だけでなくてもパーソナリティーの歪んだ

又中高年になっても美辞麗句の奇麗事を言う人間

嫉妬深い、自己中心で思いあがり人間も

見切り千両で決断しないと

自分自身が疲れ切ってしまう。

 

何故電話したのかと言えば、もしかして本当に旅立ち?をしたのか

確認したのだ。

大先輩もその意味するところ分かっていて

「心身大健康で悠々自適の生活だから

当分死にそうにない」と豪快に笑い声が電話口から聞こえた。

 

私もそのように成りたいと夢みているが才覚がない。