5月30日(水)昼前、ずっと気がかりになっていた大先輩の携帯電話にかけた。
呼び出し音が鳴り直ぐにソフトな声音のあの方の声が出た。
名前を名乗ると「おう、おう」返した。
二年前,この方から突然、自宅に電話があった。音信不通になって10年以上の歳月過ぎた。
大先輩は確かめていないが80歳近い年齢。
若い頃、大手旅行会社に勤めたが退職して、それから中小旅行会社を転々として50歳半ばで旅行会社を設立した。
大手旅行会社が団体ツアーでハワイ、台湾に送り込んでいたが、大先輩は金持ち層を
ターゲットにした。
海外の一般的名跡観光地ツアーも周って、次は誰もが行っていない海外観光を
したい金持ちご夫婦を顧客にした。
例えば南アメリカでミイラを見る旅、中近東の砂漠をラクダで
旅する等を企画した。
これを扱える旅行代理店は日本に殆どなく申し込みが殺到した。
しかし湾岸戦争が勃発して半年間ツアーの仕事がなくなった。
さすがに困って占い師に転業?しようと思い看板チラシまで製作。
当時その看板を見た。
波乱に飛んだ生き方だった。
この方と親しい友人が私のサラリーマン時代の上司だった。
私が入社した頃は既に退社していた。
2年前にその上司が亡くなったことを知らせてくれたのだ。
73歳まで社長業をして会社を外国人に譲渡した。
大儲けをして引退したのだ。
今は富士の麓に別荘を持ち上石神井の自宅には外車3台を所有。
週に2回は別荘暮らし、他はロータリークラブの会合で食事会。
当人曰く「普通の人より少し上の暮らし」と言っている。

苦境に置かれても常に明るくユーモアがあり
周囲を明るく元気付けていた。
英語の達人でもある。
大先輩の好きな言葉に
「見切り千両」がある。
引退する時も一番儲かった時に会社を原価で譲渡した。
私も大先輩の考え方に共感した。
今までも見切り千両で危機を脱したことが再三あった。
そのため金銭でも高額の損失を出したが
致命傷にはならなかった。
見切り千両は金のことと思いがちだが
わたしの実感は人間関係の清算にあると思う。
金の周りに必ず欲深き人間が付きまとうが
金の固執より「こいつはだらしない人間と判断したら、損しても断ち切る」
その覚悟が必要だ。
金銭だけでなくてもパーソナリティーの歪んだ
又中高年になっても美辞麗句の奇麗事を言う人間
嫉妬深い、自己中心で思いあがり人間も
見切り千両で決断しないと
自分自身が疲れ切ってしまう。
何故電話したのかと言えば、もしかして本当に旅立ち?をしたのか
確認したのだ。
大先輩もその意味するところ分かっていて
「心身大健康で悠々自適の生活だから
当分死にそうにない」と豪快に笑い声が電話口から聞こえた。
私もそのように成りたいと夢みているが才覚がない。