9月20日(日)
正午 、「出かけるからね」妻が玄関を〆る音がする。
朝 9時 茜浜をジョギングしてから
ソファで朝寝していた。
妻と娘で初台までアイリッシュダンス公演を見に行く。
娘は土曜日も東急文化村に同じ公演を見たのだが
何回見ても良いんだそうだ。
私もかったるい身体を奮い立たせ
身支度した。
渋谷スクランブル交差点に着いたのは14時だ。
相変わらずの賑わいと暖かい陽差しが交差点に注ぐ。
早足で病院へ向かう。
敬老イベントは14時からなのだ。
14時半 5階ホールに上がった。
マジックショーが開かれている。
お袋の後ろ姿を探す。
小柄なお袋は、更に縮んでしまった。
後ろから、そっと、骨と皮だけの肩を触れる。
「ああ 良かった」と掠れ声。
車椅子は辛いので、病室に戻った。
お袋は私の腕をしっかり握り離さない
寂しい 寂しい と言う。
ベッド脇」のテーブルに祝いのケーキが置かれているが
遺漏なので食べることが出来ない。
今日は弟夫婦に用事があり、出席出来ないので代理だ。
お袋は、兄と弟の名を呼び
来るのか訊ねている。
傍らの写真に写る30年前に亡くなった親父を指して
認知できないのだ。
親父が孫を抱いた写真
その孫が嫁さんとひ孫を抱いた写真も認知できない。
だが 体調が良好な日は、記憶を呼び戻し
写真を見て「お父さん」
孫の名前を呼ぶのだ。
16時、玄関ホールに下りた。
テーブルに今日の食事メニューが置かれている。
お袋は水を飲むこと、食べ物を口に入れることが出来ない。
道玄坂を下ると、祭囃子の笛と太鼓の音がビル街を抜けて
「さあ!お祭りですよ」知らせる。
私はお囃子に導かれるように下った。
続く。