お互いさま
敵を愛することは最高の美徳のようにいわれていますが、
よく考えてみると、 敵など現実の生活にはいないのではないでしょうか。
敵が誰か、具体的に考えてみましょう。 嫌いな人はいます。 腹の立つ人、 不愉快な人もいます。
しかし、敵というおそろしい言葉で呼ぶべき人は、 そうやたらといるものではありません。
敵を愛するという美徳を、 滑稽な気負いにしてしまう位に、 現実というものはお互いさまなものです。
仮想の敵に備えるよりは、 お互いあまり変わりのないのですから、ゆるしゆるされて生きてゆく方が、 足が地についています。
藤木正三著 灰色の断想より