似たり寄ったり
能力も違い、役割も違うのです。
私たちは確かに多くの点で違うのであり、いくら権利は平等だといっても、実際の生活は違うのです。
だからどうしても互いに比較し合う気持ちが複雑に行交うわけですが、
一方、強そうな人が簡単なことで弱さを曝し、
清そうな人がつまらぬことで醜態を演じるのであって、お互い似たり寄ったりでもあるのです。
違う点があることは確かですが、似たり寄ったりであることは、もっと確かな人間の事実と思われます。
この事実を洞察する時、人は比較し合うことを止めて、慰め合うものになることでしょう。
藤木正三著 断想 神の風景 人間と世間より