われわれは、すでにこの世において次のような幸福を知らなければならない、
すなわち、どんな事情のもとでも、また、だれでもみな、手に入れることのできる幸福がそれであり、
そして、われわれの状況がほかの点でどのようであろうとも、つねに喜びをもって心を満たしてくれるような幸福である。
このような幸福を得させるのが、哲学の理想的な任務であろう。
もしそれができなければ、どんな立派な「体系」を持とうとも、本来、哲学などというものはわれわれの役にはほとんど立たないものである。
経験上から言うと、このような幸福をもたらすものは、ただ神への信仰、神のそば近くあることの実感、および、有益な仕事だけである。
すくなくとも私はこれ以外に確実な方法を知らない。また私の知るかぎりでは、これ以外の道を発見したものはこれまでまだ一人もいないのである。
眠られぬ夜のために ヒルティ著より