女装子愛好クラブ

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1974年の女装外出記①~虚構の女~

2023年12月22日 | ★女装体験記
急に寒くなりました。
日本海側は大雪とのことです。
皆様、お気をつけてください。

先日、永田町の国立国会図書館で研究用資料としてコピーしてきた『風俗奇譚』をようやく整理いたしました。
そのなかに、富貴クラブの華といわれていた小川麻美さんの外出記~虚構の女~があります。
1974年の富貴クラブそして新宿伊勢丹の雰囲気がよくわかる佳作です。
今日から数回に分けてご紹介いたしますね。


虚構の女~ある日曜日の女装外出記~  小川麻美
  『風俗奇譚』1974年10月号

土曜の”部屋”泊まり
 カーテンのすきまからさし込む日の光のまぶしさに、やっと目をさます。土曜日というと、どうもクラブに泊まる癖がついちゃうのね。昨夜も、集まった人たちの間で、おしゃべりの種もつきると、さっとマージャンが始まるんですもの。女装のまま、女の子になってするマージャンは、すごく楽しいものなの。皆さんも、そのムードが忘れられなく、誰ともなく、やらない、ことが合言葉で、すぐメンバーが集まっちゃうの。Kお姉さん、M子、Y子、それに私。皆、女装のまま始めるのです。
 初めの間こそ、おしとやかに「アラ、それボンよ」「あたりだわ」品よく遊ぶのですが、勝負がエキサイトしてくると、つい男の生地が出るのはお笑いの種、K子お姉さんのようにベテランになると、どんな場合でも女の姿勢をくずさないのは、さすがキャリアの相違ね。

 勝負をやると皆さんの性格が出るものね。人物が堅いと信用絶大なオリエ姉さんの手堅い打ちぶり。感のいい美樹、楽天家のためかときどき冒険をする私。
 そこへいくと男性がたはおおらかね。勝負に関係なく、マージャンのふん囲気を楽しむかたが多いよう。Iさんなど、ベテランのはずなのに、よく負ける。
 「またやられたナ。今日はいくら払うんだ」
 きっと女性陣に花を持たせているのね。
 昨夜は幸運にもだいぶもうけさせてもらったわ。といっても、このお金は各自のものにならない。勝ったお金は積み立てて、ときどき皆でごちそうを食べる時の用意なの。いいルールでしょ。

 ここ南向きのお部屋は春のように暖かい。ぬくぬくするふとんを離れがたく、隣を見ると、昨夜、まくらを並べて寝たはずのK子姉さん、L子、Y子のふとんはもぬけの殼。私ってほんとうに寝坊なのね。
 起き上がるとすぐお風呂へ、朝湯、朝酒、朝寝で身上(しんしょう)をつぶした人の気持ち、よくわかるわ。朝酒こそやらなくても、朝寝、朝風呂は最高の気分。
 お風呂から上がると美容体操を十分ほど、マンションの十階から町の景色をながめながら、イチ、ニッ、サンッは私のプロポーションを美くするため、大切な日課なの。

 さあ、日曜の午後をどうしようかしら、そうだ、すみれの病気見舞いに行こう。昨日もすみれから電話があって、ここ一週間あまりクラブにごぶさたしているのは風邪引きのせいよ……とこぼしていたから。
 ふと、私のちゃめっ気が出ました。ヤボったい男の姿で行くよりは、いっそ女になって訪問したら、すみれがどんな顔するだろうな。

 思い立つと、すっかり自分のアイデアにうれしくなってしまう。昨夜、パックで肌を整えたせいか、今日はお化粧のノリがよくて、至極ごきげんです。今日のルージュは何色?
 ウイッグはロングね。黒のブラウスに黒のスカート、赤紅のニックがアクセント。黒のコートに合わせて黒のブーツ。これで今日のおしゃれは決まったわ。大鏡の前でファッション・ショーでも見物が一人もいないのは寂しいわ。


  富貴クラブの土曜日の喧騒、日曜日の気怠さがよくわかります。

小川麻美さんのお写真です



文章、写真の出所は『風俗奇譚』1974年10月号



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