女装子愛好クラブ

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1974年の女装外出記③~虚構の女~

2023年12月24日 | ★女装体験記
おはようございます。
こちら関東地方は快晴の日曜日、そしてクリスマスイブです。
でも日本海側は大雪ということ。
お気をつけてお過ごしください。

富貴クラブの華・小川麻美嬢、女装したまま伊勢丹でワンピースを買い、そして女装子仲間のすみれさんのお見舞いに向かいました。

“彼女”にまちがわれる
 すみれの好物のバナナの包みを片手に、それに、とうとう買わされたワンピースをたいせつに抱いて、彼女の下宿に着いたころは、冬の夕暮れは早くも日の沈むころでした。
 ドアをノックしても返事がありません。風邪で寝ているはずなのに、と思いつつノブを回すと、ドアは開くじゃありませんか。閉め切った部屋の中はまっ暗、眸(ひとみ)を凝らしてよく見つめる。部屋の片すみに、ふとんにくるまって寝ているすみれがぼんやり見えます。

 電気をつけて驚いたこと、部屋じゅう足の踏み場のないほどの散らかしよう。新聞、雑誌、ラーメンのどんぶりは食べっぱなしでころがっているし、洗うばかりの食器は台所にうず高く捨てておかれ、チリ紙は使い捨てたまま畳の上に。クラブの花と言われるすみれも、自室ではなんとだらしのないこと、病気で寝こんでいるにしても、ひどすぎる。
 その中で、口を半開きにして眠っているすみれの寝顔のなんとかわいいこと。Mさんが夢中になるのも無理はないわねえ。

 少しでもお部屋をきれいに、とおそうじを始めたら、
 「あれ、誰なの?」
 物音で目をさましたすみれの、とんきょうな声。
 「なによ、私よ、麻美よ」
 「なんだ、麻美ちゃんか。びっくりしたなア」
 「びっくりしたもないもんよ。なに、この部屋のきたないことったらないわ。まるでゴミ箱みたいな所によく寝ていられるわネ。おそうじしてあげようと思って」
「アー、悪い悪い、ごめんネ」
 と、それが癖の、両手で頭をボリボリかくの、その格好のあいきょうのあること、
「あんた、風邪ひいて寝てるって言うんで、好きなバナナ買ってお見舞いに来てあげたのよ」
 「いよいよ悪いなア。だいぶよくなって来たので、明日ごろから起きられると思うの」 「じゃア、今日は何か、おいしいものでも作ってあげる、何がいい?」
 「ボク、まだあまり食欲がないんだ」
 「そうなの。よくないわネ。このバナナでも食べたら」

 寝ているすみれは生地の男のコですから、どうしても「ボク」が出てくるのです。最近のクラブの様子や、私が今日、新宿で買い物した冒険談? など、気の合う二人には話題は尽きません。夢中でおしゃべりをしていると、誰やらドアをたたく音に、二人は一瞬、顔を見合わせながら、誰かしら、困ったわ。
 一間きりのすみれの室では隠れる所もないし。といって押し入れにまで入るのは、ちょっとみじめな気もしたので、ままよとドアを開けたら、下宿のお母さんが立っているじゃないの。以前、男姿の時一時会ったことがあるので、思わず休を堅くしていると、
 「アラー 岡田さん(すみれのこと)、ぐあいはどうなの。荷物が届いたから、ここに置いていくわよ。あんたもすみにおけないね、こんな彼女が介抱に来てくれるんだもの、風邪なんかどこかへ飛んでいっちゃうのじゃないかえ。いつまで、おじゃましていると、気の利かない小母さんだとしかられるから、私は退散しますよ」
と一人合点で、笑いながら降りてゆくのです。足音が聞こえなくなると、二人はこらえ切れずに、わき腹が痛くなるほど笑いこけたものです。

「ボク、ほんとうにヒヤッとしたよ」
「私もよ。前に一度、男で来たことがあるんで、バレやしないかと、下ばかり向いてたわ。でも、彼女が介抱には、よかったわネ」
 二人はまたしても、安堵感に満足の大笑いです。荷物をほどいてみると、故郷のお母さんからの心づくしがいっぱい。その中に手編みのセーターが一枚、風邪をひかないようにとの親心です。
 すみれ、いいお母さんがあって幸せね、もう、これで、すみれも風邪をひくことはなくなることでしょう。だって、愛情より暖かい着物ないでしょ。

 麻美にも、暖かい着物をプレゼントしてくれる人、早く現われないかしら。女として麻美を幸せにしてくれる人が。
 しゃべり疲れたすみれが軽い寝息をたてたのを見て、私はクラブに帰りました。現実に戻るため。
 そう、麻美は虚構の世界の女なの。ふだんは背広にネクタイの平凡な姿で、電車の中ではあなたの隣にすわっているかも知れません。 


>そう、麻美は虚構の世界の女なの。ふだんは背広にネクタイの平凡な姿で、電車の中ではあなたの隣にすわっているかも知れません。
私は、この体験手記のなかで、この言葉が一番好きなんですね。
虚構世界と現実世界を女装してトランスしていく麻美さん。
私も多くの女装子さんたちとお会いしてきました。
もしかすると、現実世界のビジネス場面でお会いしていたかもしれません。

虚構の世界の淑女の皆さん、良いクリスマスを♪


小川麻美さんのお写真です↓




文章、写真の出所は『風俗奇譚』1974年10月号
コメント
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