女装子愛好クラブ

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女装しての京都ひとり旅①

2024年10月01日 | ★女装体験記
『そうだ、京都、行こう』
このコピーはJR東海が1993年から展開している京都観光促進キャンペーンのキャッチコピーです。
山手線の駅でみると、やっぱり行きたくなりますね。
コピーライターは博報堂の杉山恒太郎さんです。

新潟に住む女装子・紘子さんも京都に行きたくなりました。
それも女の子として....。
『くいーん』1992年4月号に投稿された紘子さんの京都旅行記をご紹介しま
6頁の大作ですが、今回は前半部分を掲載しますね。
おや、掲載日からいくと「そうだ、京都、行こう」キャンペーンの前ですね。

『3泊4日の京都ひとり旅』 (新潟  紘子)
 この道半年というのに、3泊4日の女一人旅を実行してしまいました。女装外出は地方に住む者には誰もが望んでいることですが、未熟であるが故の大胆さの結果をレポートしてみましょう。参考になればうれしいと思います。
 さて、3泊4日といっても、そのうち2日は夜行長距峻バスを利用していますから実際は1泊2日に近いです。初めての完全女装旅行ですから、最初から昼の汽車利用はとても気持ちの負担が大きいですし、夜遅く出発して早朝に帰る日程ですとうまくすると休暇をとらないですむ利点があります。

 第一日。夜10時30分出発にあわせて、夕方から準備をはじめる。免許証、キャッシュカードなど身分を証明するものは一切残してゆく。メガネ以外の男物は何一つ持参しないことにした。ともすると気が弱くなって男に戻りたくなることを拒否する為。

夜8時、念入りに化粧する。夜だからという気もするが、化粧の手技きをするほどベテランではない。黒地に白の水玉模様の袖なしワンピースに、白地のボレロを重ね、黒の夏物オシャレ麦わら帽子、白のパンプスと、中年の旅行好きオバサンをイメージする。15分前に出発点へ。次第にどきどきしてくる。大丈夫だろうか。同じバスの利用者が集まるにつれ、口の中が渇き、視線がどうしても下を向いてしまう。夜だというのに、ついサングラスをかけてしまう。

搭乗券のチェックが始まる。案ずるより産むが易し。荷物をあずけ、座席へ。29人乗りの大型バスは満席。座席はリクライニングで、隣とは通路をはさんで独立している。隣の女性は、早々にねむりはじめる。誰も周囲の人を気にすることはない。安堵のため息。暗い窓ガラスに映る自分にむかって、「さあ、肩のカを抜いて。もう後戻りできないのよ。貴女は紘子なんだからね」と、声をかける。雨粒が重なって、窓ガラス、紘子、顔がにじんでくる。

第二日。まんじりともせぬうちに、早朝、京都駅につく。
そう、祇園祭、京都、これが目的。
午前6時10分。まだ殆ど人のいない駅のトイレで着がえてから、お化粧を直す。
雨はあがって、暑くなりそうな空模様。午後一時のホテルのチェックインまでの間、大原の寂光院と三千院にゆくのが、午前中の予定。コインロッカーに荷物を入れて、サァー、紘子、レッゴー。

上下の白づくしの夏物に、黒の帽子とサングラス。ハンドバッグにでカメラだけの軽装で、大原行きの始発バスを待つ。どこもお店は開いていない。用意したサンドイッチを口にする。意外なことに落ちついている。ふーん。結構やるじゃない。

定期バスの一番前に席をとる。見晴らしは良い上、地元の人達の乗り降りを見るだけでも楽しい。途中、並走するトラックの運転手にじっとみつめられるが、ニッコリすると安心したような顔となる。

三千院には、今迄二回来たことがある。観光客のいない早朝、静かな三千院の木々の間にふりそそぐ陽光は金色にみえて、心をゆさぶる。今回は、例の平清盛の娘の巡礼門院のついのすみかとなった寂光院が主目的。

終点、大原まで約一時間。おだやかな山村の風景が広がる。寂光院はバス停から歩いて十五分。バス通りを中心に三千院とは反対側の山懐に抱かれるようにあった。小さいけれど、素晴らしい建物と庭。石段を登りつめたところの山門から、山の傾斜にあわせて庭がある。寂光院からみると、三千院ですら豪華にみえてしまう。歴代の尼憎たちの信仰した地蔵尊のわびしさが尊くみえる。女性として参拝すると、昔の人々の心が伝わってくるよう。

 ところで、始発で来たというのに私の前に既に観光客がいる。自家用車という  手があったのを忘れていた。3組の老夫婦と京都の青年と私。この八人を本堂に  入れて、寺の方が一五分程、話をしてくださる。しめ切った暗い本堂のタタミに正座しての快い緊張感。開放されて外に出ると、女一人の私は目立つのか、色々な方が話しかけてくる。困る。
 「お一人ですか」
 「ええ」
 「どちらからですか」
 「新潟」
 「大原ははじめてですか」
 「いいえ」
 「前にも来られたことがあるのね」
 「ええ」
 「寂光院も?」
 「いいえ」
 イエスとノーの笞を続けているうちに、段々腹がすわってくる。
 「鞍馬へ行ったことがありますか」
  一組の老夫婦の案内をしているという男性が声をかけてくる。
 「いいえ、でも是非行ってみたいと思っています」
冷汗が背中を流れる。もしかして、わかっていて声をかけているのではないかしら。逃げ場もなく、グループのようになって石段をおりる。三千院への道で老夫婦に別れを告げ、バス停に戻る。三千院には行きそびれてしまった。





紘子さん

コメント
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