7月の平均気温は観測史上最高だったらしく、8月9月の予想も酷暑が続くと言う事でますます耐暑の工夫が必要だと思う。
万葉古今以来代々の和歌集を見ると夏の歌の数は春や秋の半分以下で、京都の夏の暑さでは古の公卿達も歌を詠む気になれなかったのだろう。
(初学和歌式 有賀長伯 江戸後期 古伊万里染付小壺 江戸後期)
この江戸後期の「初学和歌式」になっても夏の詠題の収録はまだ少ない。
大正〜昭和初期の俳句歳時記には夏の生物や納涼の風物の季語がぐっと増えたが、夏季の名句となるとやはり春秋に比べて断然少ないのだ。
私に限らず古人達も良い気分でないと良い句歌は詠めなかったようだ。
近年の蒸し暑さは昔より遥かに酷くなっているから、精々冷たい飲物や清涼な音楽で心境だけでも清浄に保ちたい。
私は例の呪いで大抵の酒類清涼飲料が飲めないので、せめて精神的に清浄になれる飲物をと考えてみた。
(煎茶竹送風書軸 八橋売茶翁 江戸時代 炉鈞窯茶器 清朝時代)
江戸時代に入ると京の文人達に夏の清らかな飲物として煎茶(冷まし)が流行して来る。
頼山陽や田能村竹田らは漢詩にも盛んに煎茶の清涼さを詠んでいる。
そこで私も色々と試したところ冷茶に最も適したのは台湾産の凍頂茶だった。
以前より白桃烏龍茶は隠者の好みだったが、清らかさと言う点では凍頂茶が上だ。
今の国産高級煎茶はやはり温かい方が断然良いので、私は冷茶ではあまり飲まない。
その凍頂茶に合う音曲は何よりもまず胡弓(二胡Erhu)だろう。
ヴァイオリンよりまろやかで澄んだ音色が夏場に聴くには心地良い。
(永福寺跡の礎石群にて二胡を弾く隠者)
中国語や英語に苦労しながらiTunesやYouTubeを探し回った結果、Eliott Tordoの二胡曲が最も良かった。
主にゲームやアニメの曲を数多く手掛けていて、PVの映像もなかなかファンタジックで質が高い。
本家中国の名人達も古曲ばかりでなく、もう少し新しい曲やアレンジでやってくれればと期待している。
彼に釣られてこの隠者も近所の中世の遺跡に下手な二胡を弾きに出て、気分だけはファンタジー映画の主人公になって来た。
愛用の100年前のライカレンズが俗世を離れた夢幻界の光芒を写してくれる。
ーーー夕月の葉漏れの光そよがせて 風吹き渡る二胡弾きの谷戸ーーー
度々で恐縮だが私が若者向けにカクヨムに連載していたライトノベルが完結したので、折々の小閑にでもご笑覧あれ。
「神聖鎌倉文士伝」 探神院著
https://kakuyomu.jp/works/16817330662945081308
©️甲士三郎