言い訳のように「もう少し二人で海に入ってこいよ。俺は久しぶりの外出で疲れたから、ここで横になっているよ」との言葉がでた。
「それから、たばこを置いて行ってくれよ」
「なにを言っているのよ、秀太くん。もう一時間程だから一緒にいましょう。何をするにも体力が必要よ。がんばってね」
「母親が子供に諭すような言いかたはやめてくれよ」
生き甲斐とか体力とか言ってくれるのは、有難い気も微かに起こったが、気分が鬱になっているので、「余計なお節介だ」が身体中の神経を駆け巡った。
剛志は、神経に触るようなことは、一言も言ったことはなかったが、これでは、妹が二人になったか、母親が甦ったようなものだ。
それでも、秀太を立ち上がる気にさせたのは、美穂が手を差し伸べたからである。
その手を払いのける勇気も気力も準備出来ていなかったから。
美穂の手は小さくて柔らかなものであったが、どうした訳か力強さを持っていた。秀太の大きな手に無いものであったが、それは微かに伝わった。手が離れたあとでも、蜘蛛の糸の危うさのような形で感触が残った。
「それから、たばこを置いて行ってくれよ」
「なにを言っているのよ、秀太くん。もう一時間程だから一緒にいましょう。何をするにも体力が必要よ。がんばってね」
「母親が子供に諭すような言いかたはやめてくれよ」
生き甲斐とか体力とか言ってくれるのは、有難い気も微かに起こったが、気分が鬱になっているので、「余計なお節介だ」が身体中の神経を駆け巡った。
剛志は、神経に触るようなことは、一言も言ったことはなかったが、これでは、妹が二人になったか、母親が甦ったようなものだ。
それでも、秀太を立ち上がる気にさせたのは、美穂が手を差し伸べたからである。
その手を払いのける勇気も気力も準備出来ていなかったから。
美穂の手は小さくて柔らかなものであったが、どうした訳か力強さを持っていた。秀太の大きな手に無いものであったが、それは微かに伝わった。手が離れたあとでも、蜘蛛の糸の危うさのような形で感触が残った。