午後の海は、雨があがったあと、からっと晴れ上がったので、小さな水溜りは温くなっていた。素足の感触は子供の頃の水遊びを思い出させて、長い間あじわっていない楽しさであった。
「こっち、こっち」
「呼ばなくても、見えてるよ。子供じゃないんだから」
その小さな水溜りに向かって野球の滑り込みのようにスライディングした。秀太は、このことにひどく狼狽した。なんということだ。自分でも捕らえられないような魅入られた気分は・・・。鬱と躁が混濁するような、悪魔の仕業のように理解した。
そうすることで、自分の中の矛盾を克服しようとする心は、まだ、病気の領域に踏み込んでいないと言い聞かせた。
しかし、ずぶ濡れになった衣服は、心の問題でないので、言い訳はしなかった。
「なんだよ~」剛志は、一言で片付けてくれたのは救いだった。
「まあ、まあ。大変。着替えも持ってないのに」美穂の言葉が、救いにはならなかったが、追い討ちとなる、慰めの言葉の追加がなかったのがうれしかった。
「車の中にタオルがあるから、服を脱いで乾かしてこい」と剛志がキーをポイと投げてくれた。一瞬に躁鬱があったことを理解した。
パンツ一つになって、脱いだ衣服を思いっきり絞って、松ノ木に引っ掛けた。春の強烈な日差しは、通り過ぎる風と一緒になって、衣服も秀太をも癒してくれるようだ。
肩からタオルをかけて、寝転んだが裸のあちこちを刺激する枯れ松葉が、考える余裕を与えないほど痛いものであった。
「こっち、こっち」
「呼ばなくても、見えてるよ。子供じゃないんだから」
その小さな水溜りに向かって野球の滑り込みのようにスライディングした。秀太は、このことにひどく狼狽した。なんということだ。自分でも捕らえられないような魅入られた気分は・・・。鬱と躁が混濁するような、悪魔の仕業のように理解した。
そうすることで、自分の中の矛盾を克服しようとする心は、まだ、病気の領域に踏み込んでいないと言い聞かせた。
しかし、ずぶ濡れになった衣服は、心の問題でないので、言い訳はしなかった。
「なんだよ~」剛志は、一言で片付けてくれたのは救いだった。
「まあ、まあ。大変。着替えも持ってないのに」美穂の言葉が、救いにはならなかったが、追い討ちとなる、慰めの言葉の追加がなかったのがうれしかった。
「車の中にタオルがあるから、服を脱いで乾かしてこい」と剛志がキーをポイと投げてくれた。一瞬に躁鬱があったことを理解した。
パンツ一つになって、脱いだ衣服を思いっきり絞って、松ノ木に引っ掛けた。春の強烈な日差しは、通り過ぎる風と一緒になって、衣服も秀太をも癒してくれるようだ。
肩からタオルをかけて、寝転んだが裸のあちこちを刺激する枯れ松葉が、考える余裕を与えないほど痛いものであった。