年老いた父親の当惑しているのを見ても、ゴネリルは少しも哀れとは思わず、反って父に向かってもっと賢明になるようにと説教し、彼の家来の不作法や乱暴な行動を厳しく非難する。
そして厳重な審査によって人数を半数に減らすようにと要求するのだった。しかもこれは厳命であり、有無を言わせないものだった。
そして厳重な審査によって人数を半数に減らすようにと要求するのだった。しかもこれは厳命であり、有無を言わせないものだった。
'The shame itself doth speak For instant remedy: be then desired By her, that else will take the thing she begs, A little to disquantity your train; And the remainder, that shall still depend, To be such men as may besort your age, And know themselves and you.' (恥知らずな振る舞いも ここまで来れば、早急に策を施さねばなりません。 わたしの言うことをお聞き届けください。 万が一お聞き入れ頂けぬとあれば、 直ちにこちらで始末せねばならなくなります。 そうしてお供として残ります者は、ご自分のお年に ふさわしい者、自らの分を弁えて、 主人の立場をよく心得ている者だけにして下さいまし)
これらの言葉は、全盛時代のリアが言った言葉であって、それは今、自分の娘から投げつけられたのだ。
この親子地位の逆転は、全てリア自身から出たサビである。自身の愚かさから、娘の手によって苦杯を舐めさせられるのである。
この親子地位の逆転は、全てリア自身から出たサビである。自身の愚かさから、娘の手によって苦杯を舐めさせられるのである。
リアは激しい口調で娘を呪う。コーディリアを罵倒したときは、彼に全て非があったが、今度の正義はリアにあるといってよい。
'Hear, nature, hear; dear goddess, hear ! Suspend thy pupose, if thou didst intend To make this creature fruitful ! Into her womb convey sterility ! Dry up in her the organ of increase; And from her derogate body never spring A babe to honour her ! If she must teem, Create her child of spleen; that it may live, And be a thwart disnatured torment to her ! Let it stamp wrinkles in her brow of youth; With cadent tears fret channels in her cheeks; Turn all her mother's pains and benefits To laughter and contempt; that she may feel How sharper than a serpent's tooth it is To have a thankless child !' (聞け、自然よ、聞け、親愛なる女神(自然)よ、聞いてくれ! この雌(ゴネリル)を孕ませる事だけは思い止まって貰いたい。 こやつを石女(うまずめ)にしてくれ! 子を生み育てる働きを悉く奪い去るのだ! この女の忌まわしい体から尊い子宝を生じさせてくれるな! もし、どうしても子を生まねばならぬなら、 心の拗けた子供を授けてやってくれ、それがやがて長じて、 この女の苦しみの種となるような無情残酷な怪物を! その子をして、この若き母親の額に深い皺(しわ)を刻ませ、 頬には、流れる涙で溝をえぐらせて、子を育てる母の苦労も 慈悲も悉く嘲笑と侮蔑の種と化してやるのだ。 蝮の牙(は)に咬まれるより、恩知らずな子を持つ事の方が 何倍も苦しいこと思い知れ!)
凄まじいまでの呪いの言葉、というより捨て台詞! ゴネリルもここまで言われたら根に持つと思う。
ここにも(nature)が出てくるが、これは親を思うという意味での「自然の情愛(nature)」であり、
一幕二場でエドマンドの使う(nature)とは正反対の意味である。
この後の自然と言う意味で使う「女神(goddess)」も同様で、いわばリアとエドマンドは対極に位置する。劇が進むにしたがって全てを無くしていくリアと、何もかも手に入れていこうとするエドマンドを対比していくと面白い。
ここにも(nature)が出てくるが、これは親を思うという意味での「自然の情愛(nature)」であり、
一幕二場でエドマンドの使う(nature)とは正反対の意味である。
この後の自然と言う意味で使う「女神(goddess)」も同様で、いわばリアとエドマンドは対極に位置する。劇が進むにしたがって全てを無くしていくリアと、何もかも手に入れていこうとするエドマンドを対比していくと面白い。
激怒のために心身ともに疲れ果てて、リアはその場を飛び出していく。しかし、再び戻ってきた彼を、娘は前より冷酷な心で迎えるのだった。
既にリアの家来は半分の五十人にされていた。リアがあの気まぐれな宣言をしてから、まだ二週間も経っていない間に。