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「リア王」 舞台内容 一幕四場(2)

2010-02-14 16:48:20 | 「リア王」

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 オルバニー公爵家の家令であるオズワルドが退場するのと、入れ替わりにリアが召し抱えている道化が登場する。
 シェークスピアの劇には数多くの道化が登場するが、この道化は他のものとは少し違う役目を負っている。

 『リア王に』に登場する道化は、貧しく知能が足りないが、心の優しい人間として描かれていて、一度信じたら、それを棄てずに何度も何度も繰り返し喋る。

 時には薄気味が悪くなるほど物事の急所を突き、時にはユーモラスに、時には苦々しい味を添えて、聞く者の心に印象を与えるように計算されていて、何よりこの劇の良心のような働きをすることだ。

 ケントがこの場で登場するまで、リアは王座を手放したことの愚かさに気が付いていなかったが、ケントとのやり取りで自分がとんでもない事をしてしまったことに気が付き始め、次にその事を道化とのやり取りで確信する。


Fool: ...... How now, nuncle ! Would I had two coxcomb and two daughters.

Lear: Why, my boy ?

Fool: I gave them all my living, I'ld keep my coxcombs myself. There's mine;
    beg another of thy daughters.

道化: ……どうだい、おっさん! おいらも欲しいな、鶏冠帽(身分を表す帽子)が二つに娘が二人。

リア:なぜだ?

道化:たとえ娘どもに全財産をくれてやっても、おいらならせめて鶏冠帽だけは
  自分の物にしておくよ。こいつはおいらのだ、おっさんも欲しけりゃ、
  娘どもに頼むしかあるまい。


 さらに、
Lear: Dost thou call me fool, boy ?

Fool: All the other titles thou hast given away;
    that thou wast born with.

    ............

Fool: ...... Give me an egg, nuncle, and I'll give thee two crowns.

Lear: What two crowns shall they be ?

Fool: Why, after I have cut the egg i' the middle, and eat up the meat, the
    two crowns of the egg.

リア:余を阿呆呼ばわりするというのか、小僧?

道化:他の肩書きを皆譲ってしまったからさ、持って生まれたものしか残っていないよ。

  …………

道化: ……おっさん、卵を一つくれたら、冠を二つやるよ。

リア:二つの冠とはどんな物だ?

道化:うん、おいらが貰った卵を二つに割って、中身を食ってしまえば、
  卵の冠が二つできるだろう。


 こういうことを繰り返しているうちに、リアはいよいよ自分のことのした愚かさを深刻に考えるようになった。


 そして彼が良心に責められているうちに最中にゴネリルがやってくる。



「リア王」 舞台内容 一幕四場(1)

2010-02-10 10:31:54 | 「リア王」

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 オルバニー公爵邸の玄関広場にて、ケントが変装をして登場する。
 前場までにリアの性格で一番悪いところである移り気と強情さ、尊大さを見てきたが、この場では彼の違った面を見ることになる。




 リアには彼を愛している者が就いている。リアの怒りをかって追放されたケント伯爵である。
彼は身分を捨て、姿形、声音まで変えてリアの元へ戻ってくる。


 ケントが変装して帰ってきたことが述べられた後、リアが娘の家の客としてどんな状態であるかを知る。
彼は狩りに出ていたので、空腹で帰ってくるのだが、家令たちのリアに対する態度はお客を迎えているようではない。
 'Let me not stay a jot for dinner; go, get it ready.'
 (直ぐに食事にしろ、待たせるな、早く仕度しろ)


 このような客がいては、どこの家庭でもうまく行くはずが無いのは明らかだ。




 リアが食事を待っている間に、ケントが、自分を「非常に勤勉で誠実だが貧乏な人間」と自己紹介して、家来として仕えたいと申し出る。


 リアはこの男が変装したケントであることに気がつかずに、召抱える。


 待たされている間にリアは益々苛立って「食事だ、おおい、食事だ! 」と叫ぶ。
オズワルドが姿を現わしたが、直ぐに立ち去ってしまった。リアは一層かっとなって喚き散らす。


 そして、リアの家来の一人である騎士が、オズワルドの無礼は、リアをないがしろにしようとする計画の一部であると述べた。




それに対するリアの答えはこうだった。
    'Thou remberest me of mine own conception: I have perceived a most faint
   neglect of late; which I have rather blamed as mine own jealous curiosity than
   as a very pretence and purpose of unkindness: I will look further into't.'
 (おまえの言葉を聞いて、この身も密かに感じておった事を、思い出させてくれた。
 最近、余の扱いに多少疎略な節があると思っておったが、それは余自身の疑い深く気難しい
 ことのせいであるとして、むしろ己を責めてきた、まさか冷酷な下心があろうとは
 露とも思わなかったが、それはもっと吟味してみることにしよう)



 しかし、再びオズワルドが姿を現わし、彼の無礼さに直面すると、すっかり自制を失って、この娘の家令を殴り、ケントもこれに加わって蹴り飛ばして部屋から追い出してしまうのだった。
 しかしこれはゴネリルの思う壺だということは、言うまでも無いことだ。





「リア王」 舞台内容 一幕三場

2010-02-08 12:03:22 | 「リア王」

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 オルバニー公爵の館の一室、ゴネリルと執事のオズワルドが登場する。
 この場は、またメイン・ストーリーに戻る。第一場から何日か時間が過ぎていて、リアは自分の計画通りに長女・ゴネリルの夫であるオルバニー公爵の館に滞在している。


Goneril: Did my father strike my gentleman for chiding of his fool ?

Oswald: Yes, madam.

Goneril: By day and night he wrongs me; every hour
       He flashes into one gross crime or other,
       That sets us all odds: I'll not endure it:
       His knights grow riotous, and himself upbraids us
       On every trifle. When he returns from hunting.
       I will not speak with him; say I am sick......

ゴネリル:お父様は、わたしの家来がお付の道化に小言を言っただけで、手お挙げになったというのね?

オズワルド:左様でございます、奥さま。

ゴネリル:昼も夜もわたしを困らせてばかりおいでになる。
    次から次と、黙っていられないような無茶をし通し、
    お蔭で館中がいがみ合いに捲き込まれたまま。
    もう沢山。お付の騎士たちは日増しに手が付けられなくなるし、
    それにお父様も取るに足らない事で一々わたし達をお叱りになる。
    狩りからお帰りになっても気分が悪いからといって、口を聞かないことにします……


 リアの性格からいって、さもありそうな話だが、全部が全部真実ではなさそうである。これは一場の最後でゴネリルとリーガンが話していった「手」の一つだ。

 もちろんリアにも責任があるわけで、どっちもどっちなのであるが…… 、でもこういう場合、間に挟まれる人間は堪ったもんじゃないよね。

 リアは、責任ある地位を去るが、しかし生活の楽しみはそのままにしておこうというだから、これは虫のいい話である。

 しかも、そんな我儘は相手が悪かったようで娘のゴネリルとリーガンは、逆にそれを利用して、リアの世話をする義務を逃れようと画策するのだ。




 ゴネリルはオズワルドの命ずる。
 'Put on what weary negligence you please,
   You and your fellows; I'ld have it come to question:
   If he dislike it, let him to our sister,
   Whose mind and mine, I know, in that are one,
   Not to be over-ruled. Idle old man.
   That still would manage those authorities
   That he hath given away !'
 (おまえもおまえの仲間たちも、大ぴらに厭々な態度をして見せておあげ、
 わたしはそれを切っ掛けにしたいのだから。それが気に入らぬとあれば、
 妹のところへいらっしゃるがいいわ。もちろん、妹の心もわたしと同じで、
 言いなりにならない事で一致しているのよ。
 年寄りの愚かさにも程ほどにしてもらいたいわ。
 棄ててしまった権力をいつまでも揮いだがるなんて!)


 これは父娘戦争が勃発する宣戦布告のような状態である。





「リア王」 舞台内容 一幕二場(4)

2010-02-05 08:57:21 | 「リア王」

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 グロスターは、さらに悪い前兆があると、話を続ける。
 'We have seen best of our time: machinations, hollowness, treachery, and all
   ruinous disorders, follow us disquietly to our graves. Find out this villain,
   Edmund; it shall lose thee nothing; do it carefully. And the noble and true-
   hearted Kent banished ! his offence, honesty ! 'Tis strange.'
 (良き時代は過ぎ去ってしまった。策謀、不誠実、裏切り、ありとあらゆる浅ましき無法が
 我らを駆り立て、休む間もなく墓場へ追い込もうとする。あの悪党を見つけ出せ、
 エドマンド、おまえを困らせるような事なせぬ。慎重にやるのだ。あの高潔で誠実な
 ケント伯爵が追放されたのだ! その罪は誠実であるという! おかしな事になってしまった)


 エドマンドは道徳心を持たないのみならず、迷信などまったく気にしない。それは彼が「私生児(natural son)」だからであり、「親を思う自然の情愛(nature)」「自然摂理(nature)」とは、掛け離れた背信者なのだ。

 特に自分の欲望を満たすためには何でもする、といった意味での「むき出しの欲望(nature)」と親を思うという意味での「自然の情愛(nature)」との対照的な(nature)の対比が『リア王』のテーマの一つなのだ。




 エドマンドは、父がエドガーを憎むように仕向ける事に成功した。次にエドガーには、父が彼に対して腹を立てていると伝え、父に近づいてはならない、行くなら武装して行くようにと忠告する。ただしエドマンドは、エドガーの味方であると信じ込ませる。


 エドガーはエドマンドの忠告に従い、身を隠すために退場した。
この後、エドマンドは事態を要約して独白する。
 'A credulous father ! and a brother noble,
   Whose nature is so far from doing harms,
   That he suspects none; on whose foolish honesty
   My practices ride easy ! I see the business.
   Let me, if not by birth, have lands by wit.
   All with me's meet that I can fashion fit.'
 (親父はお人好し! おまけに兄貴も気が良いときている。
 生れつき他人に害を加える事など夢にも思わない、
 他人もそうだと信じ込んでいる。その馬鹿正直がこちらの付け目だ!
 この一件、凡その目鼻は付いた。素性で手に入らない土地ならば、
 頭によって奪って見せる。手段は何でも結構、目的通りに事が運ぶならば)





「リア王」 舞台内容 一幕二場(3)

2010-02-03 17:01:09 | 「リア王」

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 グロスターは、コーディリアに対して激怒したリアと同じように、怒鳴りだす。
 'O villain, villain ! His very opinion in the letter ! Abhorred villain !
   Unnatural, deterted, brutish villain ! worse than brutish ! Go, sirrah, him;
   I'll apprehend him: abominable villain ! Where is he ?
 (おお、悪党、悪党め! 何という手紙を書く奴だ! けしからん悪党め!
 人倫に背く、汚らわしい、畜生同然の悪党だ! 畜生にも劣る! 奴を探して来い、
 俺が捕まえてやる、けしからん悪党め! 奴はどこにいる? )


 エドマンドは、エドガーと並べて事の次第を訊かれては、自分に嘘がばれてしまうので、逸るグロスターに、もっと慎重にするようにと宥め、事によったら兄が自分の心を探るために、こんな手紙を寄越したかもしれないと言う。
 ここも「(nature)親を思う自然の情愛」と言う意味で「(unnatural)人倫に背く」と言う語を「親不孝な」とか「孝心に悖る」と言う意味で使っている。




 迷信深いグロスターは、宮廷で起こった不幸な出来事が自分の家庭内での裏切りとを、最近の日蝕や月蝕に結び付けるのだった。
    'These late eclispses in the sun and moon portend no good to us: though
   the wisdom of nature can reason it thus and thus, yet nature finds itself scourged
   by the sequent effect: love cools, friendship fall off, brothers divide: in cities,
   mutinies; in country, discord; in palaces, treason; and the bond cragk'd 'twixt
   son and father. This villian of mine comes under prediction; there's son against
   father: the king falls from bias of nature; there's father against child.'
 (このところ打ち続いての日蝕と月蝕は、我々にとって良からぬ前兆だ。自然の摂理について
 赫々然々と説明されてはみても、その自然が神罰を受けているのだから仕方がない。その後の
 経緯を見ていれば解る。愛情は冷え、友情は地に堕ち、兄弟は対立する。都市では暴動が起こり、
 田舎では争闘、宮廷においては謀反、そして親子の絆は断ち切られる。非道の我が息子も
 例外ではない、子が父に背き、、国王も親子の情に背いた行いをし、父が子と対立する)


 ここにも「(nature)親を思う自然の情愛」と言う意味で使われていて、それとともに「自然摂理(nature)」と言う意味でも使っている。いわば、(nature)と言う語の持つ意味の対比によって『リア王』は構成されているといえるのだ。

 前にも述べたように(nature)は、この作品では重要な語であり、これに着目して読んでいくことが、読み解いていくキーワードとなるのだ。よってこの先も注目していきたい。