人生いろいろ、たぶん大丈夫だ?

40代の中年おじさんです。「四十にして迷わず」うーん、迷える中年羊を誰か救いたまえ。

東京タワー -オカンとボクと、時々、オトンー

2011年06月14日 17時00分10秒 | 作品
リリー・フランキー著

おっさんはこの本を読むのが怖かったのです。
はじめに映画をDVDで見ました。映画を見るのも怖かったです。ですから、手元に置いてからしばらく見ないで放っておきました。見ることのできる心境になるまで。
私も2003年に母をガンでなくしました。その時のつらい記憶がこの物語に触れることを拒否していたのです。

2009年、原作を読む前に映画を見ました。樹木希林さん演じるオカンがあまりにも私の母の面影に似ていたので驚きました。
リリー氏とは同じ世代なので時代感は分かります。しかし、家庭環境はいわゆる普通の家庭だったのでちょっと違うかもしれません。しかし、映画で描かれているオカンのように私の母も苦労していましたし、また母の周りに人が集まる様子も似ていました。ほっかむりをした宴会芸もやっていました。

オカンがなくなるのは東京タワーが見える病院の個室でしたが、私の母は東京ではない病院の個室で最期を迎えました。ボクは臨終に立ち会えていますが、私はできませんでした。連絡をもらって職場から駆けつけたときには、すでにチューブをはずされて安らかな顔でベットに横たわっていました。
オカンがなくなるシーンを見たときは衝撃が走りました。あんな風だったのかなぁ。

実は母が亡くなる2時間くらい前に私は電話で母と話をしています。父から連絡が入ったけれど、すぐに駆けつけることができません。そのことを伝えるために折り返し病室の電話にかけたところ、病室には誰もいなかったようで、危篤のはずの母が電話にでたのです。その声は苦しそうでしたが、私の呼びかけにはっきり答えてくれていました。その時の会話が母との最後のものになったのですが、そんな時でさえ相変わらず子供の心配をしていました。そこから急いで職場の人に仕事の引き継ぎをして病室に向かったのですが、すでに母は亡くなっていたのです。

DVDの特典映像に希林さんが「原作のハワイのシーンは自費でもいいから撮りたかった」と言っていたのが気になって、原作を読んでみようと思い2011年になってから文庫本版を買いました。

1ページ1ページ、1行1行が「そうそう」とうなずきながら読みました。でも、結末を知っているのでなかなか一気には読めません。
映画にはないエピソードもおもしろかったです。
ハワイのシーンも私のほろ苦い思い出と重なります。母と父と3人で最後に旅行したのがハワイでした。そして帰国後すぐにガンが見つかったのです。本当はハワイなんかに行っている暇なんてなかったのです。そして、葬儀の時の母の写真はそのハワイ旅行の時に撮った、自分で作ったアロハシャツを着て笑顔の写真でした。

文庫本の胃ガンの告知のシーンでいったん読むのを止めました。ここからは一気に読まなくてはならないと思い、十分な時間の取れる頃合いを見ていました。
そんなある日、基地の図書館で午後から時間ができたので、ソファーに座って読み始めました。外はいつの間にか雨になっていました。

読むのが苦痛でした。泣けました。特にボクが最後にオカンに買ってもらったのが「靴下」と書いてあったときは「ええっ!そんな!」と声が出そうでした。私も母が入院前の最後の旅行をしたときに、おみやげにもらったのが「靴下」だったのです。その時も自分のものは買わないで、なぜかラコステの靴下3足を私のために買ってきたのでした。

オカンも母もこの世からはいなくなりました。
私はリリー氏に感謝したいです。母の生前に「ありがとう」と言えなかったことへの後悔、母への感謝の気持ちを全て代弁してくれていたからです。私に、もし文才があったならば、おそらく同じようなことを書いていたのかもしれません。とにかく、私の気持ちを全てその通り表してくれたこの本に感謝したいです。

これは本当は自己満足にすぎないのかもしれませんが、私にはどうしても気持ちの区切りが必要だったのです。
賀壽さん、ありがとうございました。


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