産経新聞2005年1月24日付朝刊、文化面の企画もののページ「生命ビッグバン/こども大変時代/第一章・だだいま成長途上/右利きと左利き」という篠田丈晴氏の署名入り記事が出ていました。
氏の前説部分におっと思う記述がありましたが、それはまた別の機会ということで、本文を詳しく紹介してみます。
○混合利き
20年前の豪・メルボルン大学のタン博士の四歳児の利き手調査で、利き手が決まった子に比べ、決まっていない子の動作がぎこちなかった。512人中23人。
日本でも昨年、射手矢岬・東京学芸大学助教授(体育科学)の幼稚園児での利き手調査によると、右利き178人、左利き7人、決まっていない子10人。
(この利き手が決まったいない子を射手矢助教授は、"混合利き"と呼んでいる。)
「投げる、走る、ジャンプするなどの運動能力を調べると、混合利きの子は利き手が確定した子に比べ、おおむね点数が低い」という。
牛来(ごらい)万里子さん(現・千葉県東金市立嶺南幼稚園教諭)の五年前の五―六歳児246人のソフトボール投げの調査でも、フォーム、距離とも利き手の確立したこの方が平均で上回っていた。
○脳の機能分化
射手矢助教授―「利き手は三歳児ごろからはっきりしてきますが、混合利きの子は左右どちらを使おうか迷っている段階」で、混合利きは、脳の運動プログラムが未発達な状態と考えられ、脳の運動プログラムはいずれ発達していくため、「親は必要以上に心配する必要はありません」
利き手の獲得は、「自然な形で運動の機会を与えてほしい。体をよく動かし、ボールや鉛筆、おもちゃをいじっていると、自分で左右どちらが心地よいかわかるはず、この過程で脳の回路づくりが始まり、利きも決まってきます。」
一方、利き手が決まっていても動きがぎこちない子が増えている。
森司郎・鹿屋体育大学助教授(スポーツ心理学)によると、最近十年、右投げの際に、通常は左足を前に踏み出して投げるが、右足を踏み出す子が増えている。投げる経験が少ないのが原因だが、外で遊ぶ経験が全体に減っていることが背景にある。投げる行為では、手と足の間の協調が必要で、脳神経回路を健全に発達させることが大切である。「子供の中枢神経系の働きが低下している。体を動かしたくなる場を多く作ってほしい。」
○強制は危険
野球のスイッチヒッターも利き手はきちんと決まっている。一方が確立したから、今度は反対側を使おうという発想である。
右利きが便利な社会だから、有名スポーツ選手に左利きの割合が多いなどの理由で、利き手を最初から操作したいと考える親も多い。
森助教授―「脳が機能分化していないのに、本来右のものを左にするのは子供に精神的なストレスがかかり、発達的にリスクが大きい」
射手矢助教授―「より正確に、速く、強くなどの運動の質を高めていくのは小学校高学年から中学以降でいい。幼児期により高度な活動を求めると、大脳発達のアンバランスを生じさせる危険性があるという考え方もある」
小西行郎・東京女子医科大学教授(小児神経科学の立場から)―「当然ながら右利きでも左手の役目は大きい。それに投げるのは左でも、箸は右という人もいる。人には柔軟性があり、動きやすい方法で動いています。そういう意味では利き手の左右はあまり気にしないほうがいい」
―私の感想―
左利き右利きに関わらず、運動能力というものは子供の頃に作られた神経系の発達の上に伸びてゆくものだと思います。
まずはその基本となる神経系をうまく発達させて欲しいものです。
その神経系の設計図というのは人それぞれ持っているものです。人によりその設計図は異なるでしょうが、その持っている潜在能力を十分に発揮できるように、元になる神経系をまず確立させるべきでしょう。
右利きは右手、左利きは左手という、その子のもって生れた設計図通りの利き手をまず確立させる。
その後、人により、趣味や仕事との絡みなどで反対側の手なり足なりを使うようにしてゆけば良いと思います。
しかし、あくまでも利き手は利き手として、非利き手は非利き手として、その持てる能力を十分に引き出してゆけばよいと思います。
※本稿は、ココログ版「レフティやすおのお茶でっせ」より転載して、テーマサロン◆左利き同盟◆に参加しています。
氏の前説部分におっと思う記述がありましたが、それはまた別の機会ということで、本文を詳しく紹介してみます。
○混合利き
20年前の豪・メルボルン大学のタン博士の四歳児の利き手調査で、利き手が決まった子に比べ、決まっていない子の動作がぎこちなかった。512人中23人。
日本でも昨年、射手矢岬・東京学芸大学助教授(体育科学)の幼稚園児での利き手調査によると、右利き178人、左利き7人、決まっていない子10人。
(この利き手が決まったいない子を射手矢助教授は、"混合利き"と呼んでいる。)
「投げる、走る、ジャンプするなどの運動能力を調べると、混合利きの子は利き手が確定した子に比べ、おおむね点数が低い」という。
牛来(ごらい)万里子さん(現・千葉県東金市立嶺南幼稚園教諭)の五年前の五―六歳児246人のソフトボール投げの調査でも、フォーム、距離とも利き手の確立したこの方が平均で上回っていた。
○脳の機能分化
射手矢助教授―「利き手は三歳児ごろからはっきりしてきますが、混合利きの子は左右どちらを使おうか迷っている段階」で、混合利きは、脳の運動プログラムが未発達な状態と考えられ、脳の運動プログラムはいずれ発達していくため、「親は必要以上に心配する必要はありません」
利き手の獲得は、「自然な形で運動の機会を与えてほしい。体をよく動かし、ボールや鉛筆、おもちゃをいじっていると、自分で左右どちらが心地よいかわかるはず、この過程で脳の回路づくりが始まり、利きも決まってきます。」
一方、利き手が決まっていても動きがぎこちない子が増えている。
森司郎・鹿屋体育大学助教授(スポーツ心理学)によると、最近十年、右投げの際に、通常は左足を前に踏み出して投げるが、右足を踏み出す子が増えている。投げる経験が少ないのが原因だが、外で遊ぶ経験が全体に減っていることが背景にある。投げる行為では、手と足の間の協調が必要で、脳神経回路を健全に発達させることが大切である。「子供の中枢神経系の働きが低下している。体を動かしたくなる場を多く作ってほしい。」
○強制は危険
野球のスイッチヒッターも利き手はきちんと決まっている。一方が確立したから、今度は反対側を使おうという発想である。
右利きが便利な社会だから、有名スポーツ選手に左利きの割合が多いなどの理由で、利き手を最初から操作したいと考える親も多い。
森助教授―「脳が機能分化していないのに、本来右のものを左にするのは子供に精神的なストレスがかかり、発達的にリスクが大きい」
射手矢助教授―「より正確に、速く、強くなどの運動の質を高めていくのは小学校高学年から中学以降でいい。幼児期により高度な活動を求めると、大脳発達のアンバランスを生じさせる危険性があるという考え方もある」
小西行郎・東京女子医科大学教授(小児神経科学の立場から)―「当然ながら右利きでも左手の役目は大きい。それに投げるのは左でも、箸は右という人もいる。人には柔軟性があり、動きやすい方法で動いています。そういう意味では利き手の左右はあまり気にしないほうがいい」
―私の感想―
左利き右利きに関わらず、運動能力というものは子供の頃に作られた神経系の発達の上に伸びてゆくものだと思います。
まずはその基本となる神経系をうまく発達させて欲しいものです。
その神経系の設計図というのは人それぞれ持っているものです。人によりその設計図は異なるでしょうが、その持っている潜在能力を十分に発揮できるように、元になる神経系をまず確立させるべきでしょう。
右利きは右手、左利きは左手という、その子のもって生れた設計図通りの利き手をまず確立させる。
その後、人により、趣味や仕事との絡みなどで反対側の手なり足なりを使うようにしてゆけば良いと思います。
しかし、あくまでも利き手は利き手として、非利き手は非利き手として、その持てる能力を十分に引き出してゆけばよいと思います。
※本稿は、ココログ版「レフティやすおのお茶でっせ」より転載して、テーマサロン◆左利き同盟◆に参加しています。