南斗屋のブログ

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昭和初期にもあった弁護士の困窮と非行

2017年08月22日 | 歴史を振り返る
ある本を読んでいましたら、「弁護士の困窮」という題があり、現在のことかと思って読んでみたところ、大正の終わりから昭和の初期のころのことで、昔にも同じことがあったのだ。歴史は繰り返すものだと思いました(内田博文「刑法と戦争」)。

当時の弁護士の困窮の原因は、経済的不況と弁護士数の急増にあるといいます。今と同じではありませんか!

経済的不況というのは、大正の終わりから昭和の初期にかけて日本を襲った経済的不況です。この恐慌は「戦後恐慌」(第一次大戦後の不況)、「震災恐慌」(関東大震災後の不況)、「金融恐慌」「昭和恐慌」です。

このような恐慌の中で、大正12年に、弁護士の試験基準を甘く運用し、多くの者を合格させました。

内田教授は「このようにかなり人為的な原因による弁護士数の急増;すなわち、弁護士資格の実質的引下げによる増員と経済的不況の時期が合致したため、弁護士の生活は非常に低下することになった」と書いています。

当時、日本弁護士協会が、全国の弁護士に生活調査のアンケートを送って実態を調査したところ、なんと、6割の弁護士が弁護士業による収入によっては生活を賄えなくなっているという驚きの結果となりました。

このような経済的基盤の破綻が何をもたらしたか。

同書では「弁護士の非行が増加し、社会の非難を浴びるような事件が起こった」と記されています。

現在とのあまりの類似性というか、ほとんど変わらないことが起きていたとは全く知りませんでした。歴史をふり返りつつ、対策を立てないとまだまだ弁護士の非行は起こっていくことでしょう。


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