南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

PTSD 3

2006年04月07日 | 未分類
2 再体験症状
 再体験症状というのは、思い出したくないのに、自分の意思とは関係なく何度も繰り返して思い出したり、外傷体験が目の前で起こっているかのような錯覚に襲われることであり、フラッシュバックともいわれるものです。
 東京地裁判決では、本人は「悪夢を見る。事故のことを絶えず思い出す」と主張していましたが、裁判所は、「悪夢は事故のことに限られていないし、事故のことを思い出すのも、車や携帯電話が引き金となっている」として、再体験症状の要件を全面的には肯定できないとしました。
 この判断からしますと、事故のことに限って、しかもそれが何ら引き金もないのにおこるかどうかということを、裁判所は判断のポイントにおいているように読めます。

3 回避症状
 回避症状というのは、例えば交通事故にあえば、もう車に乗りたくもない。車に乗ることが怖くてできない、というようなことをいいます。 
 東京地裁判決では、本人は事故後も車に乗っており、この要件は否定されました。

4 覚醒亢進症状
 覚醒亢進症状というのは、眠れなくなったり、外傷体験と類似した場面にあっただけで、心臓がドキドキするようなことをいいます。
 東京地裁判決では、「本人は睡眠困難、集中困難があるというが、その程度が明らかではない」として、この要件も否定しています。

 以上のように東京地裁判決はPTSDであることについては、認めませんでした。


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PTSD 2

2006年04月05日 | 未分類
 ところで、社会的にPTSDが注目されるようになったことから、交通事故によってPTSDとなったとの主張が、裁判上でも争われることが、見られるようになってきました。

裁判所ではPTSDを認定するのに、厳格な態度を取りつつあるようです。
例えば、東京地裁H14年7月17日判決(判例時報 1792号 92頁)は、

1 外傷的な出来事の要件(自分又は他人が死ぬ、又は重傷を負うような、外傷的な出来事を体験したこと)
2 再体験症状(外傷的な出来事が、継続的に再体験されていること)
3 回避症状(外傷と関連した刺激を、持続的に回避すること)
4 覚醒亢進症状(持続的な覚醒亢進症状があること)

という4要件を厳格に適用していく必要があるとしています。
それぞれの要件について、これだけではわかりにくいと思いますので、説明を加えていきますと、

まず
1 外傷的な出来事の要件
ですが、「死亡又は重傷を負うような出来事の体験」が必要になります。前記の東京地裁判決では、本人は加療10日間、一緒に同乗していた家族は、重くても約1ヶ月の加療を要すると診断されているケースで、この程度では重傷とまではいえないとしています。


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PTSD 1

2006年04月03日 | 未分類
交通事故におけるPTSDについて何回かにわけて書いていきます。

PTSDとは外傷後ストレス障害と訳されています。
PTSDはPost-traumatic stress disorderの略です。

Postというのは、“ポスト小泉”のような使用例からもわかるように、「~の後」という意味があります。
Traumaticは、トラウマ、Stressは、ストレス、この辺は日本語でもそのまま使用されているところです。
そうしますとPTSDは「トラウマの後にくるストレスの障害(disorder)」ということになり、これを診断名らしくしたものが、「外傷後ストレス障害」「心的外傷後ストレス障害」という言葉になるのです。

ここで“disorder”の意味について、少し付け加えておきます。
“disorder”というのは“dis+order”“order”は秩序という意味です。“dis”というのは、後にくる言葉とは反対の意味を表す接頭語ですから、結局“disorder”で「秩序がない状態」を意味し、「障害」と訳されています。
医学上は、「ある臓器に明確な障害が確認され、それによって症状が出ていると、はっきり説明できる場合」を「疾患」(disease)といい、この場合だけ「~病」という診断名をつけることが許されます。
ところが、精神医学上は苦痛とか機能の障害があっても、臓器の障害がはっきりしないということが多々あり、「疾患」とは言えないものが多くあります。そこで、「障害」(disorder)という用語を用いることがあるようです。



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N式精神機能検査 下

2006年04月01日 | 高次脳機能障害の検査方法
 N式精神機能検査の検査内容を把握するために、高次脳機能障害関係の本をまず参照したのですが載っておらず、戸惑いました。
 インターネットで検索をかけて見ましたら、「痴呆の疑いがある老人を対象とした質問式の評価表のことをいいます。痴呆の程度が5段階の広い範囲で評価できるように作成されています。したがって、臨床上の継時的経過観察・薬物療法やリハビリテーションなどの判定にも利用できます。」というような定義(医学用語解説のHPから)はすぐ見つかったのですが、これでは何のことやらさっぱりわからず、イメージがつかめなかったので、いろいろ探してみましたところ、平良内科介護保険施設のホームページがそのものを掲載していただいておりましたので、リンクを貼らせていただきました。
 やはりこのように具体的にどんなものなのかの資料がないと、イメージしにくいものですね。

 インターネットを検索している限りでは、高齢者のための痴呆検査という色彩が強いようです。
 ただ、長谷川式やミニメンタルステートは、交通事故の高次脳機能障害でも頻繁に使用されているのに、このN式精神機能検査があまり交通事故の高次脳機能障害の後遺障害診断書で見かけない理由はよくわかりません。

 ところで、N式精神機能検査の点数評価ですが、
29以下 重度痴呆
30~59 中等度痴呆
60~79 軽度痴呆
80~94 境界
95以上 正常
とされているようです。



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