★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇フリッツ・ライナー最後の録音 ハイドン:交響曲第101番「時計」/交響曲第95番

2024-11-21 09:40:18 | 交響曲


ハイドン:交響曲第101番「時計」
     交響曲第95番

指揮:フリッツ・ライナー

管弦楽:臨時編成による交響楽団

録音:1963年

LP:RVC(RCA) RCL‐1001

 このLPレコードで指揮をしているハンガリー出身のフリッツ・ライナー(1888年―1963年)は、10年間にわたりシカゴ交響楽団音楽監督を務め、同楽団を一流オーケストラに生まれ変わらせたことで知られる。リスト音楽院に学び、バルトークやコダーイ等に師事したという。1909年、同音楽院を卒業後、ブダペストのコミック・オペラに入団し、ティンパニー奏者と声楽コーチを担当。フリッツ・ライナーの録音を聴くと、いつも歯切れのいい、軽快な指揮ぶりに感心させられるが、これはティンパニー奏者としての経歴からきているのではないかとも言われている。1922年のアメリカに渡り、シンシナティ交響楽団の音楽監督に就任後、 ピッツバーグ交響楽団、メトロポリタン歌劇場などで活動する。そして1953年に、シカゴ交響楽団の音楽監督に就任し、死去までの10年間、同楽団の黄金時代を築いたのである。このLPレコードは、フリッツ・ライナーが遺した数多くの録音の最後の録音(1963年)となったもので、特に、ハイドン:交響曲第101番「時計」は、数ある同曲の録音の中でも、屈指の出来栄えを誇るものとなった。オーケストラは、単に「交響楽団」とだけクレジットされた”覆面オーケストラ”となっている。その実態はメトロポリタン歌劇場管弦楽団、ニューヨーク・フィル、ピッツバーグ交響楽団、シカゴ交響楽団等からの選抜メンバーで構成された臨時編成のオーケストラ。ハイドン:交響曲第101番「時計」は、1793年にウィーン近郊で着手し、翌1794年にロンドンで完成させたロンドン交響曲のうちの1曲。愛称の「時計」は、19世紀になってから、第2楽章の伴奏リズムが時計の振り子の規則正しさを思わせることから付けられたもの。一方、交響曲第95番は、ハイドンが1791年の第1回ロンドン旅行のおりに作曲した交響曲で、いわゆる「ロンドン交響曲」と呼ばれる中の1曲で連作の中では唯一の短調作品。交響曲第101番「時計」は、全楽章にわたり、フリッツ・ライナーの特徴である、筋肉質で、しかも軽快なリズムに乗り、オーケストラの持つ能力を極限にまで引き出す指揮ぶりには感心させられる。これを聴くと大変耳の良い指揮者であったことが推察できる。逆に言うと、オーケストラは少しの手抜きも許されず、さぞ大変であったのではなかろうか。交響曲第95番は、統一感のある肉太な指揮ぶりが印象的。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇フランスの名バリトン スゼーが歌うシューマン:歌曲集「詩人の恋」/歌曲集「レーナウの詩による6つの歌曲」ほか

2024-11-18 09:51:48 | 歌曲(男声)


シューマン:歌曲集「詩人の恋」

         美しい五月には
         僕のあふれる涙から
         ばらに百合に鳩に太陽
         君の瞳に見入る時
         心を潜めよう
         ラインの聖なる流れに
         恨みはしない
         小さな花がわかってくれたら
         あれはフルートとヴァイオリン
         あの歌を聞くと
         若者が娘を恋し
         まばゆい夏の朝に
         僕は夢の中で泣いた
         夜毎君の夢を
         昔話の中から
         古い忌わしい歌

       歌曲集「レーナウの詩による6つの歌曲」

         鍛冶屋の歌
         わたしのばら
         出会いと別れ
         アルプスの羊飼いの娘
         孤独
         暗い夜に
    
       レクイエム
       献呈(歌曲集「ミルテの花」より)
       東方のばら(歌曲集「ミルテの花」より)
       二人の擲弾兵

バリトン:ジェラール・スゼー

発売:1975年

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) PC‐1529(835 146LY)

 シューマンの歌曲集「詩人の恋」は、シューマンの歌曲の年と言われる1840年に作曲された歌曲集である。詩は、ハインリヒ・ハイネの詩集「歌の本」の中の「叙情的間奏曲」により、全20篇のうち16曲を収録している。第1曲から第6曲までは愛の喜びを、第7曲から第14曲までは失恋の悲しみを、そして最後の2曲はその苦しみを振り返った曲に特徴付けられている。これらの作品は、ピアニストであったシューマンらしく、ピアノ伴奏部分が表現力に富んだ優れた歌曲になっているのが特徴。一方、このLPレコードのB面に収められた歌曲集「レーナウの詩による6つの歌曲」は、ニコラウス・レーナウの詩をテキストに、1850年に作曲された作品であり、補遺として「レクイエム」を追加して出版された。これらは、デュッセルドルフへ移るシューマンのドレスデン時代の最後の作品の一つである。10年前の「詩人の恋」は、若者の恋への憧れが、ういういしく表現された作品となっているのに対して、10年後のこの歌曲集「レーナウの詩による6つの歌曲」では、深い抒情と心の翳りといった暗い表現が中心の作品へと様変わりしている。「献呈」「東方のばら」は、歌曲集「ミルテの花」からの作品。歌曲集「ミルテの花」は、結婚の時、シューマンが妻クララへ贈った愛の歌曲集。最後の「二人のてき弾兵」は、ロシアで捕虜になっていた2人の擲弾兵(てきだんへい:擲弾<手榴弾>の投てきを任務とする兵士)が、フランスへ帰る途中、フランス軍の敗北、皇帝も囚われの身となったことを聞いて歌うバラード調の曲。このLPレコードで歌っているジェラール・スゼー(1918年―2004年)は、フランス出身の名バリトン。当然、フランスものの作品を得意としていたが、シューマンやシューベルトなど、ドイツ・オーストリア系の作品でも優れた録音を遺している。スゼーは、ドイツ・オーストリア系出身の歌手よりも、ドイツ・オーストリア系作品に対して深い洞察力をもって歌うことが出来た、フランス出身の歌手であった。このLPレコードに収められたシューマンの歌曲でも、スゼーは、あたかもビロードを思わせるような、それはそれは美しい歌声でリスナーを魅了する。こんなにまで繊細で、あくまで柔らかく、そして整った歌声を響かせる歌手は、スゼー以後はいないと断言できるほどである。このLPレコードは、そんなスゼーの真価を知り得る、貴重な録音となっている。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇シュナイダーハン、シュタルケル、フリッチャイ、マゼールによるブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲/悲劇的序曲

2024-11-14 09:49:04 | 協奏曲


①ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲

  ヴァイオリン:ヴォルフガング・シュナイダーハン
  チェロ:ヤーノシュ・シュタルケル

  指揮:フェレンツ・フリッチャイ
  管弦楽:ベルリン放送交響楽団

  録音:1961年6月3日~5日、ベルリン、イエス・キリスト教会

②ブラームス:悲劇的序曲

  指揮:ローリン・マゼール
  管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

  録音:1959年1月12日~14日、ベルリン、イエス・キリスト教会

LP:ポリドール SE 7902

 ブラームスは、ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲を1887年(57歳)の夏、スイスのトゥーン湖畔で書き上げた。それ以前に、2曲のピアノ協奏曲とヴァイオリン協奏曲、さらに第4交響曲も既に作曲を終え、最期の集大成の時期に差し掛かった頃の作品である。当時としては珍しい2つの楽器の協奏曲とした理由は明らかではないが、このLPレコードのライナーノートで浅里公三氏は「ブラームスは、その頃(第4交響曲の2年後)バッハやそれ以前の音楽に強く心をひかれていましたから、おそらく彼は、バッハ時代の”コンチェルト・グロッソ”にあやかる楽曲として”2つのソロ楽器”のための当世風の協奏曲を着想していたのでしょう」と推察している。最初の構想では、交響曲の作曲を目指していたようだが、それを変更して協奏曲とした経緯があるだけに、一般の協奏曲と比べオーケストラの比重が高く、独奏ヴァイオリンとチェロがオーケストラに溶け込むように演奏されるので、普通の協奏曲を聴くのとは、大分趣が異なり、厚みのあるオーケストラの印象が強く残る。初演は、1887年10月18日にケルンで、ヨアヒムとハウスマンを独奏者として、ブラームス自身の指揮で行われた。このLPレコードの録音は、ヴァイオリン:ヴォルフガング・シュナイダーハン(1915年―2002年)、チェロ:ヤーノシュ・シュタルケル(1924年―2013年)、指揮:フェレンツ・フリッチャイ(1914年―1963年)、管弦楽:ベルリン放送交響楽団という、当時望みうる最高のメンバーによってなされている。重みのあるオーケストラの響きを背景に、ヴァイオリンとチェロが巧みに融合し合い、如何にも渋い、ブラームス特有の世界を十二分に表現し切っている。ところで、ブラームスは第2交響曲と第3交響曲の間に、演奏会用の独立した序曲を2曲作曲した。一つは、「大学祝典序曲」であり、もう一つが、このLPレコードに収録されている「悲劇的序曲」である。「悲劇的」という意味が具体的に何を指すのかは明らかでないが、交響曲の一つの楽章のように充実した序曲であり、暗い熱情とでも言ったらいいような雰囲気を持った名曲である。指揮のローリン・マゼール(1930年―2014年)とベルリン・フィルハーモニー管弦楽団は、求心力に富み、聴いているとブラームスの情念が自然とリスナーの心の内に忍び寄ってくるような演奏を繰り広げる。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇巨匠リヒテルがベートーヴェン:ピアノソナタ第7番とバガテル集を弾く

2024-11-11 09:43:17 | 器楽曲(ピアノ)

 

ベートーヴェン:ピアノソナタ第7番
        バガテル集(Op.33、119、126)

ピアノ:スヴャトスラフ・リヒテル

発売:1979年

LP:ビクター音楽産業 VICX‐1018

 このLPレコードでピアノを独奏しているスヴャトスラフ・リヒテル(1915年―1997年)は、圧倒的な技巧に加え、感覚的で鋭い表現力を持ち、しかも音そのものの粒が揃い、弱音から強音までダイナミックレンジが広いピアノ演奏で一世を風靡したロシアのピアニストであった。リスナーが一度でもリヒテルの演奏を聴くと、男性的で力強いピアニズムの一方で、その力強いピアノタッチからはとても想像も出来ないような繊細な表現力も併せ持っているので、たちまち完全に魅了されてしまうことになる。LPレコードからは、なかなか分りづらいが、実演では即興性にも長けていたピアニストであったという。要するにリヒテルは、ピアニストとして完璧と言っていいほどの完成度を誇っていたのである。このLPレコードには、「メロディアが誇る三大巨匠の記念碑的名演を厳選して贈る画期的シリーズ遂に登場」とある。三大巨匠とは、当時世界のクラシック音楽界を席巻していた、3人のロシア出身演奏家、チェリストのロストロポ-ヴィッチ(1927年―2007年)、ヴァイオリニストのオイストラッフ(1908年―1974年)、それにピアニストのリヒテルを指す。このシリーズには、リヒテルについて7枚のLPレコードが含まれている。それらは、このLPレコードのベートーヴェン、それに加えハイドン、シューベルト、ショパン、シューマン、スクリャービン、プロコフィエフのLPレコードである。これは、リヒテルが得意としていた作曲家の幅が如何に広かったかに驚かされる。こんな例は、ホロビッツ(1903年―1989年)ぐらいしかいないであろう。このLPレコードでは、ベートーヴェンの初期の作品がリヒテルのピアノ演奏で聴ける。A面のピアノソナタ第7番は、第1交響曲よりも少し前の作品で、1793年に書かれた3曲のピアノソナタの3番目の曲。このピアノソナタの第2楽章は、「ラールゴ・エ・メスト(悲しげに)」と書かれており、物悲しさに満ちた楽章。ベートーヴェンは「心の憂愁な状態をあらわし、そのあらゆる微妙な陰影やあらゆる様相を描く」と語ったと言われる。ここでのリヒテルの演奏は、正に”憂愁な状態”を巧みに弾き出しており、ベートーヴェンの中期から後期作品かと見まごうほどの内容の濃い表現力で、聴くものを魅了する。B面に収められたバガテルとは、“ちょっとしたもの””つまらないもの”といった意味のピアノ作品のこと。リヒテルは、これらの作品でもピアノソナタと同じように全力で弾きこなす。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇クララ・ハスキルのシューマン:ピアノ協奏曲/子供の情景/アベッグ変奏曲

2024-11-07 09:41:54 | 協奏曲(ピアノ)


シューマン:ピアノ協奏曲       
      子供の情景       
      アベッグ変奏曲

ピアノ:クララ・ハスキル

指揮:ウイレム・ヴァン・オッテルロー

管弦楽:ハーグ・フィルハーモニー管弦楽団

LP:日本ビクター(PHILIPS) SFL‐7924

 このLPレコードのA面に収められたシューマンのピアノ協奏曲は、5年という長い月日を掛けて完成された。この協奏曲の第1楽章は、シューマンが31歳のとき「ピアノと管弦楽のための幻想曲」として作曲され、その後、2つの楽章が書き加えられ完成したもの。しかし、聴いてみると3つの楽章には統一感があり、一気に書かれた曲のような印象を持っている。シューマンは、ピアノ協奏曲を作曲するに当たり、名人風の協奏曲を狙ったのではなく、「交響曲と協奏曲と大きなソナタとを混ぜ合わせたような曲」づくりを目指したという。この曲の初演は、シューマン夫人のクララ・シューマンがピアノを独奏し、1845年にドレスデンで行われた。一方、B面に収められた「子供の情景」は、1838年、シューマンが28歳の時に作曲されたピアノ独奏曲。30曲ほど作曲した中から、13曲を選んで「子供の情景」という名前が付けられた。演奏上難しい技巧は必要としない代わり、夢や幻想などの雰囲気を内包した演奏内容でなければ、この曲集の真に意図するものを的確に表現することは到底出来ない。最期の「アベッグ変奏曲」は、1830年、シューマンが20歳の時に書かれたピアノ独奏曲。当時シューマンはハイデルベルグ大学で法律の勉強をしていたが、学友の一人に恋人がいて、その名をメタ・アベッグと言った。シューマンは、このアベッグの姓を音に当て嵌め、イ(A)、変ロ(B)、ホ(E)、ト(G)、ト(G)の5音を主題にして一つの変奏曲をつくり上げた。これがアベッグ変奏曲である。法律の勉強をそっちのけで音楽の勉強ばかりに没頭していた、如何にもシューマンらしい作曲の由来だ。これらのシューマンのピアノ曲をこのLPレコードで弾いているのがルーマニア出身の名ピアニストのクララ・ハスキル(1895年―1960年)である。ハスキルは当時、「モーツァルトの生まれ変わりのように演奏する」と言われていたが、その純粋で情念のこもった演奏は、シューマンのロマンの世界をつくりだすことでも突出した存在であった。このLPレコードでの演奏内容は、いずれの曲もシューマンの持つロマンの薫り高い世界を十全に描き切って、実に見事な出来栄えを披露している。一瞬、時間が止まったような、抒情の世界にリスナーを誘ってくれて、気分が安らぐ。ハスキルのような”夢”を演出してくれるピアニストは、貴重な存在だった。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇ランパル&ラスキーヌの”フルートとハープの夢の共演”

2024-11-04 09:51:54 | 室内楽曲


~ランパル&ラスキーヌ~フルートとハープ名曲集~

作者不詳:グリーンスリーヴス
クルムフォルツ:ソナタ ヘ長調
ロッシーニ:序奏と変奏
フォーレ:子守歌
イベール:間奏曲
ダマーズ:ソナタ

フルート:ジャン=ピエール・ランパル

ハープ:リリー・ラスキーヌ

発売:1979年

LP:RCV E‐1048

  このLPレコードは、フルートの名手であったジャン=ピエール・ランパル(1922年―2000年)とハープの名手であったリリー・ラスキーヌ(1893年―1988年)が共演して録音したもの。フルートとハープの組み合わせの曲は、モーツァルトの有名な協奏曲以外は、ありそうでいてあまりない、というより、あまり演奏されない楽器の組み合わせなのだ。そうであるからこそ、このLPレコードの存在自体が貴重になってくる。しかも、それぞれの奏者が超一流であるから、さらにその存在意義が高まる。そして、LPレコードという記録媒体が本来的に持つ、音の柔らかさやピュアな音質が存分に発揮されて、一度聴くと「LPレコード以外ではもう聴きたくない」と感じられるほど。フルートとハープは、数ある楽器の中でも最も古くからある楽器であるが、近代的な楽器として完成したのは、19世紀の前半という比較的最近というから、少々驚きだ。モーツァルトは、フルートの音程が不安定であったため、フルートの曲はあまり遺していない。一方、ハープはというと、長らく転調が出来ないという欠陥をもった楽器であったのが、ようやく19世紀に入り、エラールによって近代的な楽器へと生まれ変わった。この2つの楽器に共通するのが、作曲家、演奏家、楽器製造家いずれをとってもフランスとの関りが非常に強いということ。これは、フランス音楽が、この2つの楽器の優雅で、華やかな美しさに彩られた特質に、ぴたりと符合することから来ることなのであろう。フルートのジャン=ピエール・ランパルは、フランスのマルセイユに出身。1943年にパリ音楽院に入学。1947年に「ジュネーブ国際コンクール」で優勝しソロで活動を開始。1956年からパリ・オペラ座管弦楽団の首席奏者となる。現在では「ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクール」が開催されている。ハープのリリー・ラスキーヌは、パリ出身。1904年にパリ音楽院に入学。16歳でパリ・オペラ座管弦楽団にハープ奏者として入団。1934年にフランス国立管弦楽団が創設されると、ハープの独奏者に就任。現在では「リリー・ラスキーヌ国際ハープコンクール」が開催されている。このLPレコードでの2人の共演は、正に”夢の共演”の表現がぴたりと合い、優雅さと華やかさとが融合し、聴いていると、あたかも一面に美しい花々が咲き誇った花園に居るような気分に浸ることができる。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇バックハウスのモーツァルト:ピアノ協奏曲第27番(ライヴ録音)/ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番(ライヴ録音)

2024-10-31 10:27:20 | 協奏曲(ピアノ)

モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番(ライヴ録音)
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番(ライヴ録音)

ピアノ:ウィルヘルム・バックハウス

<モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番>

指揮:カール・ベーム
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

<ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番>

指揮:ハンス・ロスバウト
管弦楽:ケルン放送交響楽団

録音:1960年8月2日、ザルツブルグ音楽祭(モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番)    
   1950年10月16日、ケルン(ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番)

発売:1982年

LP:キングレコード K22‐168

 ウィルヘルム・バックハウス(1884年―1969年)は、ドイツ出身のピアノの巨匠。1905年、パリで開かれたルビンシュタイン音楽コンクールのピアノ部門で優勝。スイスに帰化した後、1954年には米国のカーネギー・ホールでコンサートを開催。その後訪日も果たしている。 若い頃は、“鍵盤の獅子王”と言われたほどのテクニシャンであった。今回のLPレコードの録音は、それまで未発表であったコンサートのライブ録音が収録された貴重な遺産である。バックハウスが遺したライブ録音としては、「バックハウス:最後の演奏会」のほかに、1954年3月30日にニューヨークのカーネギー・ホールで行ったベートーヴェンのピアノソナタを中心としたリサイタルが重要な録音として挙げられる。これらはいずれもリサイタルのライヴ録音であるが、今回のLPレコードに収録されたものはコンチェルトのライヴ録音というところがポイントとなる。バックハウスは、第27番以外のモーツァルトのピアノ協奏曲をあまり弾かなかったようであり、特に晩年は第27番だけに絞られていたという。一方、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番は、カール・ベーム指揮、およびハンス・シュミット=イッセルシュテット(1900年―1973年)指揮でそれまでに2回録音している。今回のレコードの指揮は、モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番がカール・ベーム(1894年―1981年)、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番がハンス・ロスバウト(1895年―1962年)である。ハンス・ロスバウトは、特にハイドンからベートーヴェンに至るまでウィーン古典派の作品に定評があった。このベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番について、ライナーノートにおいて浅里公三氏は「1950年の録音としては比較的音質が良く、また拍手も入っていないので、コンサートではなく生放送用の録音と思われる」と書いている。このLPレコードでのモーツァルト:ピアノ協奏曲第27番の演奏内容は、全体が襟を正した端正な表現に終始しており、モーツァルトの音楽が持つ純粋な美しさを満喫することができる。録音の最後で1960年8月2日当日のザルツブルグ音楽祭の聴衆の拍手が聞けるのが何となく嬉しい。ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番は、如何にもバックハウスの十八番らしく、スケールの大きい、柔軟性を持った表現力が印象に残る。ベートーヴェンに真正面から取り組み、その本質を見事に引き出す技には感服せざるを得ない。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇プーランクのヴァイオリンソナタ/2つのクラリネットのためのソナタ/チェロソナタ

2024-10-28 09:46:18 | 室内楽曲(ヴァイオリン)

 

プーランク:ヴァイオリンソナタ       
      2つのクラリネットのためのソナタ       
      チェロソナタ

ヴァイオリン:ユーディ・メニューイン

ピアノ:ジャック・フェヴェリエ

クラリネット:ミシェル・ポルタル        
                モーリス・ギャベー

チェロ:ピエール・フルニエ

録音:1972年11月22日、25日(ヴァイオリンソナタ)    
   1972年3月1日(2つのクラリネットのためのソナタ)    
   1971年11月3日、29日(チェロソナタ)

LP:東芝EMI EAC‐40135

 主にドイツ・オーストリア系音楽の作曲家の作品を中心に聴いているリスナーにとっては、プーランク(1899年―1963年)の作品は、少々”奇妙な”印象の音楽に聴こえるはずである。フランス音楽の典型のようなプーランクの音楽は、モーツァルトやベートーヴェン、ブラームスの作品を愛好する人々にとっては、鬼門とも言える音楽なのだ。しかし、これは、明治維新以来、日本の政府が取ってきたドイツ・オーストリア系音楽教育重視の結果に過ぎず、本質的にフランス音楽と日本人が疎遠な関係にあるわけではない。それどころか、日本の古来の詩歌管弦の世界は、むしろフランス音楽のようなニュアンスを漂わせてすらいる。ということで今回は、普段あまり聴く機会に恵まれないプーランクの室内楽を3曲収めたLPレコードえある。まず、第1曲目は、1943年に作曲(1949年に改訂版)されたヴァイオリンソナタである。このソナタは、1936年にファシストのために銃殺されたスペインの偉大な詩人フェデリコ・ガルシーア・ロルカ(1898年―1936年)を追悼するために書かれ、その霊に捧げられた曲。当時、ロルカの死は、西欧の知識人に深甚な衝撃を与えた。このため、プーランクによるこのヴァイオリンソナタも、曲全体のわたって悲壮感が漂い、聴くものの心に重く響く。このLPレコードでは、プーランクとも交友があったというユーディ・メニューイン(1916年―1999年)のヴァイオリン、ラヴェルから高い評価を得ていたジャック・フェヴェリエ(1900年―1979年)のピアノで演奏されている。各楽章の感情の起伏が明快にリスナーに伝わり、聴き応えのある仕上がりとなっている。次の2つのクラリネットのためのソナタは、プーランクが19歳の時の短い作品。プーランクがフランスの楽壇に登場した時に書かれた作品で、作曲者の意欲が感じられると同時に、フランス音楽の静寂さがリスナーに切々と伝わってくるようだ。最期のチェロソナタは、1948年4~9月に書かれ、このLPレコードで演奏している、当時”チェロのプリンス”と謳われたピエール・フルニエ(1906年―1986年)に献呈されており、初演もピエール・フルニエのチェロで行われた。作曲者から献呈を受けたピエール・フルニエの演奏は、流石にこの曲の本質をずばりと突いた名演を聴かせる。これら3曲は、プーランクを聴かず嫌いなリスナーには、是非一度は聴いてほしい曲だ。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇シューリヒト指揮ウィーン・フィルのモーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」/シューベルト:交響曲第8番「未完成」

2024-10-24 09:43:36 | 交響曲(シューベルト)

 


モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」
シューベルト:交響曲第8番「未完成」

指揮:カール・シューリヒト

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

発売:1980年

LP:キングレコード:K15C 8007

 ドイツの名指揮者カール・シューリヒト(1880年―1967年)は、第二次世界大戦後、ウィーン・フィルと共に米国およびヨーロッパツアーを行ったが、これが大成功を収め、世界的に注目を浴びることになる。日頃から指揮者に対しては冷たいウィーン・フィルの楽団員も、シューリヒトだけには一目置いて、特別に敬愛していたという。このように、シューリヒトは、高齢になって知名度が上がり、プロの楽団員たちに尊敬されるほどの真の力を持った指揮者だったのだ。シューリヒトの録音を聴くと、いずれも颯爽とした速いテンポに貫かれており、流れるような、明晰な表現力が光っていることが、遺された録音から分る。決してスケールの大きい巨匠型の指揮者ではなかったが、万人を納得させるに足る明快な音楽性を持ち、かつ即興性に富んだ指揮ぶりで、多くのファンの心を掴んで離さなかった。このLPレコードは、A面にモーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」、B面にシューベルト:交響曲第8番「未完成」が収められているが、特にB面のシューベルト:交響曲第8番「未完成」の演奏内容が圧倒的名演だ。その奥行きの深い表現力に、リスナーは引き付けられる。リスナー一人一人に語りかけるような演奏でもあり、早くも、遅くもないそのテンポは、絶妙そのものだ。シューベルトがこの曲に託したロマンの世界と苦悩を含んだ独白のようなフレーズを、シューリヒトは心からの共感を持って振り進める。シューベルトの揺れ動く心を表現して余すところがない。そして、そこには曖昧さなど微塵も感じられないのである。何か力強さすら感じられるのだ。表面をなぞったような演奏が多いこの曲だが、シューリヒトの指揮は、シューベルトへの共感が極限にまで高められ、陰影を含んだ求心力の高い演奏に終始する。通常なら何かにつけ独自性を強調しがちなウィーン・フィルのメンバー一人一人も、この時ばかりはシューリヒトを信頼してか、一糸乱れのない一体感のある見事な演奏を聴かせる。一方、モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」は、この曲の明るい性格をなぞるようにして軽快に、そして時には即興的な雰囲気を込めながら演奏を進める。この曲がもともとセレナードとして作曲されたことを、シューリヒトが強く意識したことによるものだろう。これらの演奏は、この2曲を代表する名録音となった。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇ジノ・フランチェスカッティのクライスラー名曲集

2024-10-21 09:38:36 | 室内楽曲(ヴァイオリン)

 

~クライスラー名曲集~

クライスラー:愛の喜び        
       愛の悲しみ        
       レシタティーヴォとスケルツォ・カプリース
       ウィーン綺想曲        
          中国の太鼓        
          美しきロスマリン        
          プニャーニのスタイルによる前奏曲とアレグロ        
          ボッケリーニのスタイルによるアレグロ        
          ロンディーノ        
          ボルポラのスタイルによるメヌエット        
          ロンドンデリーの歌

ヴァイオリン:ジノ・フランチェスカッティ

ピアノ:アルトゥール・バルサム

LP:CBS/SONY SOCU 59

 このクライスラー名曲集のLPレコードで演奏しているヴァイオリストのジノ・フランチェスカッティ(1905年―1991年)は、日本でも数多くのファン(ただし、一度も来日歴は無い)を持った、名ヴァイオリニストであった。フランス人とイタリア人の血を引いているためか、イタリア的な明るさと、フランス的な優雅さとが混ざり合って、独特な雰囲気を醸し出していたヴァイオリニストであった。両親がマルセイユ歌劇場のヴァイオリン奏者を務めたいた関係もあり、3歳から父親の手ほどきを受け、5歳の時に公開の演奏会を開いたというから、早熟であったようだ。10歳でオーケストラと共演してベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を演奏している。パリに出て、当初は、オーケストラの一員として活動したが、1931年からソリストとして独立。1939年には、アメリカでデビューを果たし、その名を世界に轟かすことになる。父親は、ジノ・フランチェスカッティに対し「何も沢山のヴァイオリニストの演奏を聴く必要は少しもない。クライスラーただ一人を聴けばいい」と言ったそうである。このためか、ジノ・フランチェスカッティにとって、クライスラーは陰の師というべき存在でもあったようである。このLPレコードに収められた全部で11曲のクライスラーの名曲を、ジノ・フランチェスカッティは、実に洒落た感覚で演奏しており、何回聴き直しても少しも飽きが来ないのはさすがというべきだろう。最初に書いたようにジノ・フランチェスカッティの血には、イタリア人の血とフランス人の血とが混ざっており、これによって、クライスラー独特の世界を、チャーミングな感覚で弾きこなすことに成功しているのである。クライスラーの曲は、ヴァイオリニストの力を試す試金石としてはこれ以上のものはない。ホントの実力が無ければ、クライスラーの曲の演奏で、リスナーを心から引き付けることは到底不可能だ。このLPレコードでのジノ・フランチェスカッティの演奏は、華やかさの裏に哀愁を含んだものとなっており、ジノ・フランチェスカッティが「クライスラーはこんな風に弾けばいいんだよ」とでも言っているように私には聴こえるのである。このLPレコードでピアノ伴奏をしているアルトゥール・バルサム(1906年―1994年)は、ポーランド・ワルシャワ出身。2人のコンビは1938年に始まっただけあって、十分に息の合った伴奏ぶりを披露している。(LPC)    

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