ドヴォルザーク:交響曲第8番
ヤナーチェク(ターリッヒ編曲):交響組曲「利口な女狐の物語」
指揮:ヴァーツラフ・ターリッヒ
管弦楽:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
発売:1997年7月
LP:日本コロムビア OW‐7704‐S
これは、チェコの大指揮者のヴァーツラフ・ターリッヒ(1883年―1961年)を偲ぶLPレコードだ。どちらかと言えば“歴史的名盤”の範疇に入る録音なのかもしれないが、決して鑑賞に向かないほどでもなく、ターリッヒ指揮チェコ・フィルの名演を堪能することができる貴重な録音である。演奏しているチェコ・フィルは、最初に指揮をしたのがドヴォルザークであり、今日の世界的な一流オーケストラに育て上げたのがターリッヒであった。チェコの首都プラハには1881年に建てられたプラハ国民劇場があるが、同劇場のオーケストラのメンバーを中心として、チェコ・フィルハーモニー協会が設立され、その2年後の1896年に、ドヴォルザークが自作を指揮して、現在のチェコ・フィルが誕生したのであった。そして、1919年にターリッヒが常任指揮者に迎えられ、以後、22年間にわたってターリッヒは、チェコ・フィルの技能を大幅に向上させ、魅力的な音質と独特なリズム感を持った、世界でも有数のオーケストラへと育て上げたのである。ターリッヒの指揮の特徴は、現代的な合理的な感覚をベースとして、ボヘミアの民族的な香りを巧みに融合させたところにある。ヴァーツラフ・ターリヒは、モラヴィアの出身。プラハ音楽院を卒業後、ベルリン・フィルのコンサート・マスターに就任後、指揮者に転向。このLPレコードには、ターリッヒ指揮チェコ・フィルの演奏で、ターリッヒと同郷のドヴォルザークとヤナーチェクの作品が収められている。正調のドヴォルザークそしてヤナーチェックを聴くことができる歴史的録音とでも言えようか。ドヴォルザーク:交響曲第8番は、しばしば「イギリス」という愛称で呼ばれるが、これはただ単に最初にイギリスで出版されたので付けられただけで深い意味はない。有名な新世界交響曲の4年前に書き上げられ、ドヴォルザークの“田園交響曲”とでも言えるほどボヘミアの民族色が反映された曲で、哀愁に満ちたそのメロディーを聴いたら二度と忘れられない魅力を秘めている。ここでのターリッヒ指揮チェコ・フィルの演奏は、民族の共感に溢れ、心の底に響くような熱い情熱と、明快な圧倒される表現力でリスナーを魅了して止まない。一方、ヤナーチェク:交響組曲「利口な女狐の物語」は、ヤナーチェクの歌劇「利口な女狐の物語」をターリッヒが交響組曲に編曲した作品。普段はあまり演奏されない曲ではあるが、“チェコの真夏の夜の夢”とも言われる幻想的な曲だ。豊かなボヘミヤの自然の息吹が肌で感じられるような心地良い演奏に仕上がっている。(LPC)