フランク:交響曲ニ短調
指揮:シャルル・ミュンシュ
管弦楽団:ボストン交響楽団
発売:1976年
LP:RVC(RCAコーポレーション) RGC‐1042
フランクは、数多くの充実した作品を遺してくれているが、今回のLPレコードは、その代表作ともいえる交響曲ニ短調である。私は最初、このシンフォニーの第1楽章を聴いた時、そのあまりの迫力に思わず後ずさりしたことを思い出す。重厚な音楽が何の迷いもなく一直線に突き進む様は、オーケストラの醍醐味を思う存分に味あわせてくれる。第3楽章の高揚感も、他に例えようがないほどである。何か音楽の中心に一本、柱がど~んと入っているような充実感を味わうことができる。そしてこの曲で何よりも大切なのは、指揮者の資質であろう。フランクの音楽の真髄を理解した指揮者でなければ、効果は思ったほど上がらない。その点、このLPレコードのシャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団のコンビは、フランクの交響曲ニ短調を演奏するのに最上の組み合わせといえよう。フランクの意図する高揚感をミュンシュは、ごく自然な形で演奏している。このため程よい緊張感に包まれた最上のシンフォニーの全貌がリスナーの前面に展開される。ところで、フランクはフランスで活躍したが、もともとの出身はベルギーである。このため、フランス音楽風の交響曲というより、あたかもドイツ音楽風の交響曲であるかのような交響曲ニ短調が誕生したのではないだろうかと推察される。さらに、フランクは生涯にわたってオルガン奏者を務めたこともあってか、この交響曲ニ短調は、オルガン風の壮麗さを併せ持った作品となっている。指揮のシャルル・ミュンシュ(1891年―1968年)は、当時ドイツ領のアルザス・ストラスブールに生まれ、後にフランスに帰化した。1926年ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のヴァイオリン奏者となり、1932年まで楽長のフルトヴェングラーやワルターの下でコンサートマスターを務めた。1929年にパリで指揮者としてデビュー。1937年~1946年パリ音楽院管弦楽団の常任指揮者を務めた。1949年ボストン交響楽団の音楽監督・首席指揮者に就任し、1962年までの13年間にわたってその座にあった。辞任後、国家の要請を受けて、低迷していたパリ音楽院管弦楽団を発展的に解消させたパリ管弦楽団を一流のオーケストラに育て上げるという手腕を発揮した。ミュンシュの指揮ぶりは、男性的な力強さの中に瑞々しい繊細さを秘めたもので、曲全体を壮麗にまとめ上げることに長けていたが、このLPレコードでもそのことが十分に聴き取れる。初来日は1960年で、合計3回来日している。(LPC)