モーツァルトは、1782年から2年の歳月を費やして、6曲からなる弦楽四重奏曲「ハイドンセット」を作曲し、ハイドンに献呈した。これは、ハイドンが1781年に、古典主義的ソナタ形式を完成させることになる弦楽四重奏曲「ロシア四重奏曲」を発表したことに触発されたものと言われている。6曲とは、弦楽四重奏曲第14番~第19番のことであり、このLPレコードでは、このうち、第18番と第19番「不協和音」が収録されている。第18番は1785年1月10日に完成し、演奏時間が30分を超す曲で、ベートーヴェンがフーガの勉強をした曲としても知られている。この曲と続く第19番「不協和音」は、ハイドンを自宅に招いて聴かせるために急いで書かれたもののようだ。しかし急いで書かれたとは到底思えず、第18番は地味ながらも内容は実に堂々とした弦楽四重奏曲となっている。第19番は「不協和音」の名で親しまれ、こちらも充実した内容で知られる弦楽四重奏曲。完成したのは第18番の4日後、すなわち1785年1月14日である。「不協和音」と名付けられたのは、当時としては大胆すぎる第1楽章の和音の扱いのためであり、このため「誤りではないか」と言われたり、後代の人によって訂正されたほど。このLPレコードで演奏しているのは、旧東独時代において最も卓越した室内楽団の一つと言われたベルリン弦楽四重奏団。第1ヴァイオリンが名ヴァイオリニストとして知られるカール・ズスケ(1934年生まれ)。カール・ズスケは、ヴァイマル音楽大学とライプツィヒ音楽大学で学び、1954年首席ヴィオリストとしてライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団に入団。1959年に第一コンサートマスターに就任後、1962年ベルリン国立歌劇場管弦楽団のコンサートマスターに移籍し、1965年にはズスケ四重奏団(後のベルリン弦楽四重奏団)を結成した。 その後、1975年ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の第一コンサートマスターに戻り、2001年までその地位にあった。1991年から2000年まではバイロイト祝祭管弦楽団のコンサートマスターを務め、NHK交響楽団の客演コンサートマスターとしてもしばしば来日。このLPレコードでは、第1ヴァイオリンをカール・ズスケとするベルリン弦楽四重奏団の演奏は、細部に気配りが行き届いた、実に完成度の高い、説得力の富んだ演奏を披露しており、当時の名声を偲ばせる名演奏を聴くことができる。特に4人の息がぴたりと合い、自然の流れに添うような、しなやかな演奏には特筆すべきものがある。(LPC)
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