~赤盤復刻シリーズ カザルス名演集~
バッハ:アダージョ(トッカータハ長調より、シロティ編~カザルス改編)
<1927年2月28日録音>
ルービンシュタイン:へ調のメロディー(ポッパー編)
<1926年1月20日録音>
シューベルト:楽興の時第3番(ベッカー編)
<1926年1月4日録音>
ショパン:夜想曲変ホ長調Op.9‐2(ポッパー編)
<1926年1月20日録音>
フォーレ:夢の後に(カザルス編)
<1926年1月5日録音>
ゴダール:ジョスランの子守歌
<1926年1月20日録音>
グラナドス:歌劇「ゴエスカス」間奏曲(カサド編)
<1927年2月28日録音>
サン=サーンス:白鳥(組曲「動物の謝肉祭」より)
<1926年1月20日録音>
ショパン:前奏曲変ニ長調Op.28‐15「雨だれ」(ジーヴェキング編)
<1926年1月19日録音>
ワーグナー:優勝の歌(楽劇「ニュールンベルクのマイスタージンガー」より、ウィルヘルミ編)
<1926年1月19日録音>
ワーグナー:夕星の歌(歌劇「タンホイザー」より)
<1926年1月4日録音>
イルマッシュ:やさしきガボット
<1926年1月4日録音>
チェロ:パブロ・カザルス
ピアノ:ニコライ・メトニコフ
発売:1979年
LP:RVC(RCA) RVC‐1563(M)
このLPレコードは、”チェロの神様”といわれたパブロ・カザルス(1876年―1973年)が赤盤(著名演奏家に特化した録音盤)のSPレコードに遺した録音を、LPレコードに復刻したものである。この録音は1926年~1927年であり、カザルス50歳前後の油の乗り切った時代(カザルスは96歳と長命であった)にSPレコードに録音したものだけに、音質は現在の録音レベルとは比較にはならないが、しっかりとした安定感ある録音状態で、今となっては誠に貴重な録音と言える。カザルスはスペインのカタルーニャ地方に生まれた。チェロの近代的奏法を確立し、その深い精神性を感じさせる演奏において20世紀最大のチェリストと言われている。同時にカザルスは、平和活動家としても有名で、音楽を通じて世界平和のため積極的に行動したことでも知られる。 1971年10月24日の「国連の日」、カザルス94歳の時に、ニューヨーク国連本部にて演奏会が行われ(その時の録音は世界中で聴かれ当時大きな話題となった)、同時に「国連平和賞」がカザルスに授与されている。1961年には、弟子のチェリストの平井丈一朗(1937年生まれ)のために来日し、リサイタルのほか東京交響楽団、京都市交響楽団を指揮した。このLPレコードのライナーノートは、カザルスの高弟であった平井丈一朗が執筆しており、「先生(カザルス)は、真の意味での理想的な技巧の持ち主であり、千変万化の技巧は全く他の追随を許さないものである。にもかかわらず、先生の演奏を聴いていると技巧というものを感じさせない。それは、先生の技巧が常に音楽と一体になったものであり、芸術の深い内容を表現するための極めて自然な手段と化しているからだと言えよう。先生は、19世紀末までは常識となっていた旧式なテクニックを一掃し、最も新しい合理的なチェロの奏法を完成し、チェロ音楽を芸術的に比類のない最高のものにまで引き上げた」とカザルスの偉業を、感動的な文章で綴っている。このLPレコードにおけるカザルスの演奏は、実に堂々とチェロと向き合い、骨格のしっかりとした音楽を形づくっている。同時にチェロがヴァイオリンのように軽やかに鳴る様に驚くばかり。そしていつもは何気なく聴いているポピュラーな曲でも、一旦カザルスの手に掛かると奥の深い、格調の高い曲に聴こえてくるのは、実に不思議な体験ではある。なお、このLPレコード・ジャケットは、SPレコード時代の雰囲気をデザインしたもの。(LPC)