★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ナタン・ミルシテインのグラズノフ&ドボルザーク:ヴァイオリン協奏曲

2024-01-22 09:42:05 | 協奏曲(ヴァイオリン)


グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲
ドボルザーク:ヴァイオリン協奏曲

ヴァイオリン:ナタン・ミルシテイン

指揮:フリューベック・デ・ブルゴス

管弦楽:ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

LP:東芝EMI (SERAPHIM)EAC-30341
 
 ナタン・ミルシテイン(1903年―1992年)は、ウクライナ出身の名ヴァイオリニスト。11歳のとき名教師と謳われたレオポルト・アウアーの指導でペテルブルク音楽院に入学。ロシア革命後、キエフに戻り、ウラジミール・ホロヴィッツと知り合い、しばしば共演する。1929年にアメリカ・デビューし、ニューヨークに居を構える。1975年、グラミー賞受賞、1968年、レジオン・ドヌール勲章を受章。傑出した超絶技巧の持ち主ではあったにも関わらず、フランコ・ベルギー楽派の優美な演奏スタイルで知られ、“ヴァイオリンの貴公子”と称された。1942年にはアメリカ合衆国の市民権を取得している。大の飛行機嫌いだったせいもあり、来日をせず、日本での知名度は今一つであった。全盛時代には、ハイフェッツ、フランチェスカッティ、オイストラフに継ぐ巨匠として高い評価を得ていた。ナタン・ミルシテインは、グラズノフとドボルザークのヴァイオリン協奏曲を3度録音しており、これは3度目の録音。グラズノフとドボルザークのヴァイオリン協奏曲が今知られているのは、ナタン・ミルシテインが積極的に取り上げてきたためとさえ言われているほど。このLPレコードのライターズノートに浅里公三氏は「このフリューベック・デ・ブルゴスとの3度目の録音が、あらゆる点で最も優れており、ミルシテインの極め付きの最良のレコードとなっている」と評価している。この2曲のヴァイオリン協奏曲は、そうしばしば演奏されるわけではないが、内容の充実した聴き応え十分のヴァイオリン協奏曲である。グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲は、ミルシテインの師であるアウアーにより初演され、ハイフェッツやミルシテインなどアウワー門下によって、これまで弾き続けられてきた、鮮やかな名技性と華麗な管弦楽法によって構成される魅力的な作品で、ロシア国民楽派の作風を受け継いだスラヴ的な曲。一方、ドボルザーク:ヴァイオリン協奏曲は、ドボルザーク唯一のヴァイオリン協奏曲であり、スラヴを代表するヴァイオリン協奏曲。作曲に関してはヨアヒムから様々な助言を受け、彼に「深い尊敬をこめて」献呈された。このLPレコードでのナタン・ミルシテインの演奏は、グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲おいては、端正な中にロマンの香り豊かな演奏を聴かせる。一方、ドボルザーク:ヴァイオリン協奏曲では、スラヴ的な情熱を内に秘めた構成力の強固な演奏で、リスナーを魅了する。(LPC)
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