★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇イーゴリ・マルケヴィチ指揮ロンドン交響楽団のチャイコフスキー:交響曲「マンフレッド」

2022-04-04 09:50:26 | 交響曲


チャイコフスキー:交響曲「マンフレッド」

指揮:イーゴリ・マルケヴィチ

管弦楽:ロンドン交響楽団

録音:1963年11月、ロンドン

発売:1980年

LP:日本フォノグラフ(フィリップスレコード) 13PC‐235(835 250LY)

 このLPレコードで指揮をしているイーゴリ・マルケヴィチ(1912年―1983年)は、帝政ロシア(現ウクライナ)生まれの名指揮者。育ちはスイスであるが、後にフランスに渡りナディア・ブーランジェのもとで作曲およびピアノを学び、まず作曲家としてスタートを切った。18歳でアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮して、指揮者としてのデビューも果たした。チャイコフスキーやムソルグスキーなどロシアものの作品の指揮を得意としていた。1960年には初来日し、ストラヴィンスキーの春の祭典などの指揮では、当時の日本の楽壇に大きな影響を与えた。以降度々来日し、日本での人気も高かった指揮者の一人であった。メリハリの効いた颯爽とした指揮ぶりは、当時の日本の多くのファンを魅了したものである。このLPレコードでのマルケヴィチの指揮ぶりは、正に自身の特徴を最大限発揮しており、鮮やかな色彩感を伴った演奏スタイルは、今日に至るまでチャイコフスキーの交響曲「マンフレッド」の代表的録音であると言って過言でないほど。ところで交響曲「マンフレッド」は、交響曲と名付けられていても第1番~第6番には数えられずに、チャイコフスキーが1885年5月から9月にかけて書き上げた管弦楽曲(交響詩風交響曲)で、バイロンの劇詩「マンフレッド」に基づく標題交響曲という位置づけになっている。交響曲第4番と第5番の間に作曲されたが、番号が付けられていないのである。この曲の正式な曲名は、バイロンの劇的詩による4つの音画の交響曲「マンフレッド」ロ短調作品58。バラキレフに献呈され、1886年3月にモスクワで初演された。作曲者によって4手ピアノ版も作成されている。もともとバラキレフ自身が作曲を思いついたが、何故か自身では作曲せず、チャイコフスキーに作曲を勧め完成したもの。バイロン卿(1788年―1824年)が書いた「マンフレッド」は、自我の苦悩を描いた3幕10場、約3000行からなる長編詩劇。「奇怪な罪を犯し、悶々として世界を放浪する孤独厭世のマンフレッド伯が、アルプスの山中に精霊・魔女を呼んで、忘却を求めるが、与えられず、自殺も許されず、遂に予言の時が来て、悪魔の手に連れ去られる」というのが筋。シューマンも音楽劇「マンフレッド」を作曲しており、その中の「序曲」は演奏会でしばしば演奏される。チャイコフスキーの交響曲「マンフレッド」の評価は、人により異なるようだ。昔はよく演奏された曲のように思うが、どうも最近あまり聴かれないのは少々寂しい気もする。(LPC)


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