~マリオ・デル・モナコ/オペラ・アリア集~
ヴェルディ:「オテロ」より“オテロの登場”/“清らかな思い出は遠いかなたへ”
プチーニ:「トゥーランドット」より“誰も寝てはならぬ”
ジョルダーノ:「アンドレア・シェニエ」より“ある日青空を眺めて”
ワーグナー:「ローエングリン」より“はるかな国に”
マスカーニ:「カヴァレリア・ルスティカーナ」より“母上よ、さらば”
マスネ:「ウェルテル」より“オシアンの歌「春風よ、なぜわたしを目ざますのか」”
ヴェルディ:「アイーダ」より“清きアイーダ”
プチーニ:「マノン・レスコー」より“なんとすばらしい美人”
マイヤベーア:「アフリカの女」より“おお、パラダイス”
ヴェルディ:「オテロ」より“オテロのモノローグ”
ビゼー:「カルメン」より“花の歌”
レオンカヴァルロ:「ラ・ボエーム」より“愛する面影”
ジョルダーノ:「アンドレア・シェニエ」より“五月の晴れた日のように”
テノール:マリオ・デル・モナコ
指揮:アルジェオ・クワドリ
管弦楽:ミラノ交響楽団
LP:東芝EMI EAC‐40158
その昔、“黄金のトランペット”と呼ばれたイタリアの名テノール歌手がいた。それが今回のLPレコードでオペラのアリア集を歌っているマリオ・デル・モナコ(1915年―1982年)である。モナコの代名詞みたいなっているのがヴェルディの「オテロ」である。1950年に「オテロ」を初めて歌い、1972年のブリュッセル(ベルギー王立歌劇場)の公演までに200回以上も同役を歌ったという。モナコの声は、誰よりも輝かしく高らかに響きわたることであり、このLPレコードでもそのことが聴き取れる。当時の人は、モナコの声を聴くだけで、たちまちその美声に痺れてしまったという。このLPレコードでもその高らかな美声をたっぷりと楽しめる。日本公演の模様は、このLPレコードの解説で、武石英夫氏が「デル・モナコの第一声から受けた衝撃に、改めて声の魅力、オペラの魅力を強烈に思い知らされた」と書いている通り、まだあまり本場のオペラに接することの少なかった当時(1959年)の日本人に強烈な印象を与えたことが読み取れる。また、同氏がこの解説で「FM放送が未だなかった当時、ラジオの第1放送と第2放送を使っての立体放送を通じて、日本のオペラ・ファンを驚嘆させた」と書いているところを読んで、「そうだ、当時はFM放送はまだ放送開始されておらず、ステレオ放送は2台のAMラジオ受信機で聴いていたんだ」と、暫し古き昔を思い出してしまった。マリオ・デル・モナコは、イタリアのフィレンツェ(一説にはガエタ)で生まれる。音楽好きな父と、声楽をたしなんだ母の下で育ち、父の勤務の関係から13歳でロッシーニの生地ペザロの音楽院に入学。初めはヴァイオリンを学んでいたが、併せて声楽を志した。14歳で近くの町の新しい劇場のこけら落としに、マスネ―の1幕の歌劇「ナルシス」で初舞台を踏むことになる。 本格的にオペラのデビューを飾ったのは、1940年、25歳の時、ミラノのプッチーニ劇場での「蝶々夫人」であった。第二次世界大戦では従軍したが、1945年、終戦とともに本格的な活動を開始し、1947年、ヴェロナの野外劇場で「アイーダ」に出演。その後世界各地で公演し、その名声を不動なものにしていった。マリオ・デル・モナコの歌声には、小細工がなく、よく開いた喉から”黄金のトランペット”と言われた、強靭なトランペットのような輝かしい響きを持った歌声が飛び出してくる。このLPレコードには、これらのマリオ・デル・モナコの歌声の特徴が明確に捉えられ、貴重な録音である。(LPC)
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