★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇エーリッヒ・クンツのドイツ愛唱歌集

2024-05-27 10:05:25 | 歌曲(男声)

 

~エーリッヒ・クンツのドイツ愛唱歌集~

シューマン:二人のてき弾兵
ブラームス:眠りの精
シューベルト:笑いと涙
リスト:愛の夢
レーがー:マリアの子守歌
シューベルト:音楽に寄す
シューマン:くるみの木
ベートーヴェン:自然における神の栄光
ジルヒャー:ローレライ リスト:ローレライ
モーツァルト:すみれ
ベートーヴェン:君を愛す
ヴォルフ:主顕祭
ヴォルフ:眠れる幼な児イエス
ブラームス:セレナード
シューベルト:シルヴィア寄す

バリトン:エーリッヒ・クンツ

指揮:アントン・パウリク

管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団

発売:1982年

LP:キングレコード(VANGUARD) K18C‐9294

 エーリッヒ・クンツ(1909年―1995年)の名前を聴くと我々の世代は、ウィーン国立歌劇場のバリトン歌手という肩書きより、「ドイツ学生の歌 大全集」(SLE1034~8)の5枚組みのLPレコードを吹き込んだバリトン歌手といった方がぴんと来る。何故、当時、ドイツ学生の歌が流行ったのか、今となっては知る由もないが、多分、その当時は戦前の旧制高等学校の気風がまだ残っていて、何処となくドイツ学生の歌を聴いていると、旧制高等学校の雰囲気を思い出し、青春のノスタルジーに浸る人が多く居たのが一つの原因ではなかったからではないだろうか。エーリッヒ・クンツは、ウィーン生まれのオペラ歌手で、特にモーツァルトに作品を得意としていた。1940年からウィーン国立歌劇場には所属し、フィガロ役、パパゲーノ役、レポレロ役では記録的な出場回数を誇っていた。ウィーン国立歌劇場の戦後分だけで、フィガロ役が249回、パパゲーノ役が338回、レポレ役がロ211回という記録を打ち立てている。1959年にウィーン国立歌劇場員公演の際に来日した。同時にエーリッヒ・クンツは、ドイツ学生歌やドイツ民謡についても数多くの録音を残している。それらの録音の一部が日本で「ドイツ学生の歌 大全集」として発売されヒットし、そして、その延長線上にあるのが、今回のLPレコードの「ドイツ愛唱歌集」なのである。これらの曲目を見ると、そのほとんどが日本人にとっても馴染みのある曲であり、理屈ぬきに楽しめるLPレコードとなっているのが、何とも嬉しい。第1曲目のシューマン:二人のてき弾兵を聴いただけで、昔の情景が眼前に広がり、懐かしい気持ちにしてくれる。シューマン:二人のてき弾兵は、昔はラジオからしょっちゅう流れてきて、あたかもクラシック音楽の代名詞のような曲になっていたことを思い出す。今はあまりこの曲を聴くことはなくなった。少々大時代ががっているからだろうか。第2曲目のブラームス:眠りの精になると、今度はエーリッヒ・クンツの歌い方は情緒たっぷりにがらりと変わる。この辺の絶妙の変わり身が、当時のリスナーに大受けしたのだろう。エーリッヒ・クンツの音質は、柔らかく、暖かい。そう言えば思い出した。当時は「歌声喫茶」の全盛時代であり、このLPレコードを聴いていると肩を組み合って歌う、「歌声喫茶」の想い出が蘇る。(LPC)


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